同人誌「k.press/ケイプレス」:ドイツxオタク文化に関心を持つ有志諸氏が寄稿する同人誌。夏/冬の「コミックマーケット」(東京)にて頒布。※オリジナルの紙版では写真有り
コスプレイヤーのHanziさんとは、今年頭のフランクフルト・オタク交流会でたまたま知り合いました。Hanziさんは日本からドイツに移住し、現地のイベントに積極的に参加するコスプレイヤーのひとり。先日開催された「CosDay² 2025」では、僕が企画した日独コスプレ文化紹介パネルにも登壇協力いただき、ドイツ人参加者に向けて日本のコスプレ文化について紹介してくれました。今回はその振り返りも兼ねて、Hanziさんにお話をうかがいました。
登壇のきっかけは、もともとドコミ(デュッセルドルフ)に参加した際に、日本とドイツのコスプレ文化の違いに驚いた経験があったからだそうです。たとえば「衣装を着たまま公共交通機関で会場入りしていい」というルールの違いや、現地のコスプレイヤーによる独自解釈の創作表現の幅広さに触れ、「これは語るべきテーマだ」と感じたのだとか。さらに、ヨーロッパのフォロワーからも「ディズニーランドでコスプレしてもいいのか?」「おすすめのスタジオは?」といった質問が寄せられていたこともあり、需要を感じたそうです。
<写真:cosplay 2_3>
パネル準備にあたって苦労はなかったものの、なるべく参加型にしたいと考えてクイズ形式を取り入れるなど、工夫を凝らしたとのこと。最大の壁は言語だったといいます。「伝えるための言葉選びにはとても気をつかいました。でもそのぶん、改めて日独の違いや共通点を自分でも考え直す良い機会になりました」と振り返ってくれました。
当日は思っていた以上に多くの参加者が集まり、積極的な質問も相次ぎました。とくに盛り上がったのは「スタジオのデコレーション文化」についての話題。日本のレンタルスタジオの豊富なシチュエーションや、装飾へのこだわりに関心が集まったようです。
また、印象に残った質問のひとつが「なぜ日本では公共の場でコスプレしてはいけないのか?」というもの。露出の多い衣装や、作品理解の乏しい一般人との摩擦を避けるためだと説明したものの、この点は特に関心が高かったようです。「日本ではコスプレイヤーはどう見られているのか?」という問いには、「最近は親しみのある存在として見られるようになってきた」と答えたものの、一概には言えない複雑さも感じているようでした。
<写真:cosplay 3_3>
Hanziさんはこれまで、ドコミやコスデイといったドイツの主要イベントに参加しています。ドイツのコスプレシーンについて、「キャラに“なる”というより、自分の個性を乗せてキャラを表現するスタイルが強い」と話します。タトゥーやピアスを隠さず、そのまま衣装に取り入れる姿勢は、日本との大きな違いだといえるかもしれません。自身が「ツイステッドワンダーランド」のジャミルを演じた際には「本物かと思った」と褒められたこともあったそうです。
ドイツのコスプレ文化ですが、日本よりも「原神」のコスプレが多い傾向があります。近年は『葬送のフリーレン』や『薬屋のひとりごと』といった日本発の作品も人気が高く、これは翻訳版の存在が影響しているのではないかと話してくれました。また、ドイツではアマチュア劇団によるステージショー(Showgruppe)が盛んで、いわゆる2.5次元ミュージカルが浸透していることに驚いたそうです。
インタビューの最後に、あらためてこの経験を通じて感じたことを尋ねると、「やはり一番の驚きは、日独のコスプレ文化のカルチャーショックです」と答えてくれました。日本ではキャラになりきることが重視されますが、ドイツでは、キャラ同士が手をつないだりキスをしたりするなど、「そのキャラはそういう行動をとらないのでは?」と思うような場面も見かけるそうです。表現の幅が広い一方で、キャラの作り込みにはそれほどこだわらないのかもしれない──そうした印象を持ったと語ってくれました。
自分の国のコスプレ文化を、どうやって他の国の人に伝えるべきなのか?そんな問いを、Hanziさんの体験を通して、あらためて僕自身にも投げかけられた気がしました。
<写真キャプション>
1)ドイツのグループコスプレに参加するHanziさん、2)「コスデイ」のコスプレ文化パネルの様子、3)パネル後に来場者と。(写真提供:3枚ともHanziさん)
<プロフィール>
Hanziさん
ドイツ在住の日本人コスプレイヤー。これまでデュッセルドルフの「ドコミ」やフランクフルトの「コスデイ」に参加。次はドイツで撮影ロケに挑戦してみたいとか。
SNSアカウント
インスタグラム:@jicos621lxlxlx
欧州アニクラ最前線 華子さんに聞いてみた
<写真:anikura 1_3>
聞き手・Kataho
ドイツ・デュッセルドルフに暮らす華子さんは、日本ではアニクラ(アニメソング系クラブイベント)に通っていたという根っからの音楽ファンです。現在ドイツで暮らして3年でになりますが、その「アニクラ・ライフ」は変わらず続いています。今回は、そんな彼女に、ヨーロッパのアニクラ事情を教えていただきました。
欧州で行われるアニクラは、アニメコンベンションの夜間プログラムとして開催されることが多いそうです。たとえば、ドイツ最大級のアニメイベント「ドコミ」では、夜のDJイベントに4桁規模の人数のファンが詰めかけ、ステージのDJが遠目にしか見えないほどの盛況ぶりです。一方、独立系のイベントでは100人規模のアットホームな会場が中心。会場はライブハウスやクラブが多く、DJのプレイスタイルも多様です。
とくに印象的なのは、日本と異なる「音の作り方」。アニソンの原曲をそのまま流すのではなく、リミックスやマッシュアップ、EDMとのミックスなどが中心。重低音が響き続ける空間に、アニソンのフレーズが絡むというのが欧州流です。音ゲー由来のハードコアも人気で、日本のMOGRAのようなスタイルに影響を受けたDJも多く見受けられます。華子さんも「MOGRAリスペクトは欧州にも根付いている」と語ります。
<写真:anikura 2_3>
具体的な開催地を聞いてみると、ドイツではデュッセルドルフの「ドコミ」や、10〜11月に行われる「アキバクラブ」、ケルンやデュッセルドルフで定期的に開催される「Pon de Beats」があり、どれも現地のアニクラ文化を支える存在です。「Pon de Beats」はときにはオランダでも開催されるなど、国境を越えた広がりを見せています。
他にも、ポツダムで行われる「アニメメッセ・バーベルスベルク」、ドイツ各地で展開する「KAIZOKU」、フィンランドの「デスコン」や「Neonya!! Party」、オランダの「UNMUTED」など、ヨーロッパ各国に独自のアニクラシーンが根付いていることが分かりました。特にスペインのアニクラにはまだ行けていないとのことで、「いつか行ってみたい」と話してくれました。
印象に残っているDJを尋ねると、「ドコミ」のJ-Rave常連である DJ BrainShit の名前が挙がりました。選曲のセンスや盛り上げ方が絶妙で、「いつも楽しくて外せない存在」とのこと。「Pon de Beats」でもプレイしているそうです。
<写真:anikura 3_3>
気になるのは、欧州のアニクラと日本のそれとの違いです。これについては、「日本のイベントは細かいレギュレーションが決まっていることが多いですが、ヨーロッパのアニクラはかなり自由です。お客さんも思い思いに楽しんでいて、フロアの空気がゆるやかです」と華子さん。男女比は男性がやや多めで、年齢層は20〜30代が中心。いわゆる“オタクっぽさ”よりも、ワンポイントでアピールするファッションの“陽キャ”が多いのも特徴のようです。たとえば、法被や『ワンピース』の麦わら帽子などを身につける人もちらほら。
最後に、ヨーロッパのアニクラで印象的だった瞬間を尋ねると、「日本語の歌詞を、みんなが一緒になって大合唱していたとき」との答えが返ってきました。「まるで日本にいるかのようで、日本人としてとても嬉しかったです。同じものが好きな友達がどんどん増えていくのも、アニクラの醍醐味です」と笑顔を見せてくれました。
アニソンが好き、それだけで国際交流のきっかけになるわけです。欧州のアニクラを制覇してみたい!改めてそう感じました。
<写真キャプション>
1)大規模なアニクラ、2)独立系イベント、3)ファンの楽しみ方も様々(写真提供:3枚とも華子さん)
<プロフィール>
華子さん
ドイツ在住のアニクラファン。イベント参加歴はドイツにとどまらず周辺国にも広がる。最近はスペインのイベントに興味津々。
SNSアカウント
X:@sgmt_HaNaKo
昔、ドイツ語を学びに現地にやってきた語学青年がいました。理由は、ドラクエ的世界観、世界史の授業、そしてエヴァンゲリオンが好きだから。そういったものが大好物な自分と日本の大学でドイツ語学ぶ自分との間に大きな乖離を感じていたのが、消えた瞬間。それがドイツ滞在でした。本屋に並ぶマンガと読者の存在。語学学校で世界中の人と知り合う機会があるといっても、動機は様々で会話ははずみません。それがある時、アニメやマンガについて話すことで交流が捗りました。その時、思ったのです。
そうだ ドイツ語で<もっと>オタク文化交流しよう。
そうすれば、アニメやマンガで盛り上がって楽しい自分とドイツ語を学びたい自分がひとつになれる。もっと、この感動をと求め、そして自分だけではもったいないと「活動」にのめり込んで、、、四半世紀が経過しました。は?
オタクは一から十まで説明しないといけないから。。。それが伝道師の使命だから。。。
という気持ちはぐっと抑えて今回は今年分に限って振り返ってみることにします。
アニメやマンガのファンって、日本食ファンでもあるんですよね。
もちろん、そうじゃない人もいます。しかし重なる部分は大きいのです。というわけでフランクフルトの中堅イベントで企画してみたのが、日本食を紹介するプレゼンでした。とはいえ来場者は若者が多いわけです。おっさんが客観的な専門情報を出してもつまらないわけです。そういう手堅い情報はネットにいくらでもあります。そこで思いついたのが、同世代の日本人から彼ら彼女らの日本の食事にまつわる「好き」をシェアしてもらったらどうかと。粗削りでいいんですよ、内容もドイツ語も。大事なのは日本の同世代の若者の「今」を知ることが魅力になるのではと考えたのです。そこで日本の若者3人にプレゼンを考えてもらいました。ステージでは、僕はコメント係として登壇し、説明が足りない部分を最低限補いました。
ポツダムは近年強力に協力しているイベントです。
昨今流行りの異世界転生アニメにおけるトレンドのひとつとして悪役令嬢モノというのがありますが、今年はワールドプレミアをコーディネートさせてもらいました。10月放送予定の新作アニメシリーズの1話を3ヶ月も早くポツダムで見られるという先行上映会を中心とした企画です。日本から監督、キャラデザ、プロデューサーに現地入りしてもらい、上映直前のトークセッション、アニメスタジオ紹介、監督とキャラデザによるライブドローイングをセッティングしました。
関連して、同じアニメスタジオによる放送済みのアニメタイトルもひとつ、作品の深堀りを通じて理解を深めようという趣旨のもと紹介する企画を考えました。準備作業だと、実は後者の作品紹介のほうが大変でした。というのも、作品の魅力を伝えるために代表的なシーンを特別上映しようと考えたのはよかったのですが、ちょうどよい1話を探すことができず。都合、中盤の連続する2話を選び、1話目のBパートと2話目のAパートを編集することになりました。もちろん、勝手に切り貼りすることは許されませんので、アニメスタジオを通じて製作委員会と連携しながら作業しました。といっても映像編集ソフトのスキルは僕にはありませんので、協力者におまかせしましたが。
秋のカッセルのイベントは昨年立ち上げられた新イベントです。
まさか同じ年に2度も先行上映会を実施できるとは思ってなかったのですが、会場では欧州先行上映会として新選組をベースにしたマンガのアニメ化作品を紹介させてもらいました。ドイツではこれまでも『薄桜鬼』や『刀剣乱舞』によりある種のサムライ人気はあったと思います。しかし、新選組は歴史上の人物・出来事でもあります。そこで、単なる空想の話ではありませんよと強調する意味も込めて、新選組自体の紹介も意識的にやりました。日本からは制作系のプロデューサーとキャラデザの方に来てもらいましたが、どちらも本来は対外的な窓口を担当しない方たちです。
普段、ステージでパフォーマンスを行わない方によるステージ企画を考えるのは、僕自身にとって長年のテーマでもあります。なるべく普段の仕事について話す/見せることでゲストの負担を極力軽減し、しかし同時に制作現場の雰囲気を直接伝え、より身近に体験してもらうことに努めています。そしてそれが来場者/アニメファンにとって最強のステージ企画になると僕は考えています。
このカッセルではアニメの紹介と並行して、マンガ家ゲストの企画も担当させてもらえました。こちらは、以前からお付き合いがありイベント出演企画も一緒にやったことがある方です。どうせやるならと、今回はこれまでの企画を深化/発展させる形で、ステージ企画以外にも常設ブースも用意しました。この常設ブースでは、各種グッズ、作品の販売やコミッションだけでなく、壁を活用して生原稿の展示も行いました。そして、個人的には達成感があったのがイベントのキービジュアルの制作コーディネートです。完成したアートワークがプログラム冊子やポスター、エコバッグに印刷されているのを見ると感慨深いものがありました。
振り返ってみると、カッセルで担当したステージプログラムは3日間で計6本でした。各プログラムの直前には、ゲストと通訳者で流れを確認する打ち合わせを行います。加えて、合計6回のサイン会がありまして、、、これは詰め込みすぎでした。サポート要員と二人で対応しましたが、限界ですね。
最前線を切り刻んでいるのだが?
最前線なら本来は切り開くものです。しかし、切り開けば、その先に何かが見えるのが普通です。困ったことに僕の試行錯誤は終わりがまったく見えないのです。切っても切っても開けない、なので、切り刻んでいるだけなのではと考えました。穴が開いて、突破口になってる感じがない。切り刻んで「ここはだめか」とまた閉じて、別の所で切り込んで。それを繰り返すだけで先に進んでいる感覚がありません。そんな中、もう少し予算があればと思うことがあります。軽い気持ちでワンコインで支援できる仕組みがあったり、どーんと「好きにつこてー」という申し出があってもいいのかもしれません。そういう仕組みづくりも、2025年にも挑戦していきたいなと。悶々と。まだ道半ばなのです。
最後に写真を1枚。カッセルでのライブドローイングの様子、僕目線。
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最近、アニメのドイツ語字幕をチェックするのが楽しくなってきたKatahoです。アニメの魅力が最もたくさん詰まっている場所、それがドイツ語字幕なのかもしれません!というのは大袈裟ですが、今回は今年2023年にドイツ語字幕(一部音声も)付きで視聴したアニメの中から気になったドイツ語表現を振り返りつつ、魅力の一片を伝えることに挑戦してみます。
「逃げたらひとつ、進めばふたつ」というフレーズが印象的だったのは、『機動戦士ガンダム 水星の魔女』でした。ドイツ語字幕では、「Wer flieht, gewinnt nur eins. Wer dranbleibt, doppelt.」(ヴェア、フリート、ゲウィント、ヌア、アインス。ヴェア、ドランブライブト、ドッペルト)でした。直訳するとおよそ「逃げる者は、ひとつだけを得る。そこに居る者はダブル」。ドッペルゲンガーでおなじみの動詞doppeln、ドッペルン(二重<二倍>にする、『現代独和大辞典』、三修社)が使用され、それだけで「分かる分かるぞー」と気分が高揚するわけですが、「進む」が前進を必ずしも意味しない動詞dranbleibenなあたり、ドイツ語だとこう表現したほうが分かりやすいのかと考えてしまいます。Bleibenは「居る」だったり、状態が継続する様なの、この場合、逃げずに継続している様子が表現されていると思います。
さて、字幕はどの分野も大変でしょうが、アニメも特有の工夫が求められる分野かもしれません。一口に口語的表現と言っても、アニメファン界隈に限定してたりと文脈をしっかり理解する必要があると思われます。
俗語というと、教科書で学ぶ言葉ではないので翻訳は難しそうだなといつも感じています。『異世界でチート能力を手にした俺は、現実世界をも無双する〜レベルアップは人生を変えた〜』第2話では、例えば「俺は帰宅部だ」(Ich bin im Heimgehklub)というセリフがあります。この「Heimgehklub」(ハイムゲークルプ)は、家(ハイム)+行く(ゲーエン)、で「家に帰る」となるわけですが、そこに英語のクラブに相当するクルプを付けた合成語です。ドイツ語の日常会話では使わない言葉だと思いますが、直訳的に表現してあるので意味はドイツの人でも分かるわけです。そこから日本語だとそういう表現があるんだろうなと想像する人もいるでしょう。
例えば、『鬼滅の刃』では、かりんとうが「Zuckerteigstangen」(ツッカータイクシュタンゲン)となっていました。かりんとうという菓子はドイツには存在しません。なのでZucker(砂糖)+teig(衣)+stangen(棒)と言っておけば、およそどういう菓子なのかは理解してもらえそうです。ただ、Zuckerteigstangenだとアニメを見てないドイツの人だと「砂糖の衣をまとった棒」しか意味しないので、そこからかりんとうに至るには難しいでしょう。
ドイツ語で直訳してくれて初めて意味がよく理解できたのが『英雄王、武を極めるため転生す 〜そして、世界最強の見習い騎士♀〜』に登場した「血鉄鎖旅団」という組織名。ケツテッサリョダンと耳で聞いてもすぐに漢字が思い浮かばず、今ひとつピンと来なかった名称でした。これがドイツ語字幕だと「Die Bluteisenketten-Brigade」(ブルートアイゼンケッテン・ブリガーデ)。Blut(血)+eisen(鉄)+ketten(チェーン/鎖)に軍隊の「旅団」を指すブリガーデが付いているわけです。英雄王は西洋ファンタジーの世界なので、ケツテッサリョダンもかっこいい名前ですが、ブルートアイゼンケッテン・ブリガーデもなかなか魅力的だと思ったものです。先日、『涼宮ハルヒの憂鬱』のドイツ語音声版が全話一挙配信されたのですが、「SOS団」もSOS-Brigade(ブリガーデ)となっていました。「団」に込められた「クラブ」以上の組織のニュアンスが出てそうです。個人的にはブリガーデは旅団なので言い過ぎのような気もしますが。
もっとアニメを見たい、でもドイツ語も勉強したい。と考える人はどれくらいいるのか分かりませんが、筆者は日本の大学でドイツ語を学んだとき、よく悩んだのです。そして今も。アニメを見るとドイツ語の勉強時間が減る。ドイツ語の勉強をすればアニメを見る時間が減る。しかし、最近、気づいたのです。アニメの字幕でドイツ語を学んでもいいじゃないかと。
アニメかドイツ語で悩んだら、アニメのドイツ語字幕に進めばふたつ手に入れられます!
Wer flieht, gewinnt nur eins von Anime oder Deutsch. Wer dranbleibt, doppelt.
へー、ドイツにも日本のアニメや漫画が来ているのか!と感動して20年近くが過ぎ去りました。自分の大好きなアニメや漫画をテーマが現地の人と交流できるコミュニケーションツールになる。大いに感動したものです。ドイツに住み始めて1年目に当時コブレンツで開催されていたアニメファンが集まるイベント「アニマジック」に参加し、ファンの質、量(主にコスプレ)に圧倒されました。数年後、「みらいのねいろ」というボカロ文化を海外に紹介する有志の集まりに参加。ボカロ系のクリエーターをドイツのイベントにコーディネートしていたはずなのです。それがいつの間にかアニメ監督、漫画家、DJ、コスプレイヤーなど、日本のポップカルチャーの最前線にいるクリエーターの皆さんから協力を得て、ドイツに日本文化を届けるお手伝いをしてきました。。。
え、ただの自分語りなのですか?自慢話?いいえ、これまでの経緯を知ってもらったほうが分かりやすいかなと。
草の根オタク交流とは、
一般の人たちによるオタク同士の交流会だと思ってください。僕はこれが大好きでして、日本にいたときからオフ会や大学のサークル活動を通じてアニメや漫画について語り合うのが一番楽しい時間でした。それがドイツに来てからも通用すると知ってからは、ドイツのアニメファンたちと日夜語り明かしたものです。特にドイツのファンからすると、アニメや漫画が好きな日本人でドイツ語を話せる人はそれほど多くなく、日本から出てくることも少なかったと思います。なぜなら、純粋にアニメや漫画を楽しみたいのなら日本にいたほうがメリットが多いからです。
オタクたるもの伝道師たれ!
とは言いませんが、こうしたアニメや漫画を通じた海外のファンとの交流をもっと多くの人に体験してもらうにはどうすればよいのか?そう考えるようになりました。イベントにクリエーターを招待し、作家や作品の深く知ってもらう。そして、クリエーターに現地のファンと交流してもらう。アニメや漫画文化を通じた国際交流の一丁目一番地です。ただ、これだけでは日本から一般のアニメ漫画ファンがわざわざドイツに来ることにはつながりにくいです。先述の「みらいのねいろ」の活動では、上映会やプレゼンなどのプログラムでイベントに協力する一方で、日本から現地を訪れた人たちと現地のファンとの交流会が催されていました。今から10年以上前の話ですが、日本から海外のファン事情に興味のある人が一定数存在し、ドイツのイベントの様子を見に来るひとが当時は一定数いたわけです。SNSなどでそういった人たちの存在を見つけて声を掛け、同時にドイツのファンコミュニティでも参加希望者を募り、何度か交流会を開催しました。そういう、単身でドイツのイベントにやってくるような、ある種の求道者、または先駆者とでも呼ぶべき人は、自分の視界に映らないだけなのかもしれませんが、最近は少なくなりつつあるようです。
ドイツにもアニメファンはいる!
と言っても、今でもあまり信じてもらえないことが多いです。なぜか日本の報道ではフランスやイタリアが先行しがちです。皆さんが今読んでいるこの同人誌もそうですが、これまで日本に向けてイベントレポートや講演など様々な方法でドイツのアニメ(ファン)事情を紹介してきました。ドイツも知ってもらいたいとの思いです。ネットメディア「ねとらぼ」への寄稿も今年で10年目を迎えました。ライター活動を通じて、日本からドイツのイベントに参加する人が増えればいいなと願っていました。ただ、現実はそう甘くなかったのです。
草の根オタク交流は広がらない?
やはり、日本からドイツのイベントに一般の人が参加するにはハードルが高いのです。渡航費の高さや言葉の壁もあるでしょう。イベントのチケットの買い方が分からず、躓いてしまうケースもあります。では、どうすればよいのか?解決策はひとつではなく様々な工夫を凝らすしかないと僕は考えています。まず、言葉の壁については、簡単な会話を習得する必要があると思っています。ただし、簡単な会話でいいのです。作品名や推しのキャラ名を伝えることができれば、簡単なコミュニケーションは成立します。次に、イベント参加ですが、一般入場だと現地のファンとの接点が生まれにくいです。コスプレの写真を撮るために声を掛けるくらいでしょうか。ここは、イベント主催者が協力すべきでしょう。つまり、例えば、主催者が日本からやってきた人たちに交流の場を設けてみてはどうでしょう。日本語学習者とアニメファンは重なる部分も多いです。アニメイベントの来場者に日本語学習者はわんさかいます。もし、会場で日本語学習者を集めることができれば、言葉の壁も多少は低くなり、交流もはかどると思います。彼らも学んだ日本語を使いたくてうずうずしているはずです。
では、ブース参加はどうでしょうか。ブース参加で残念だと思うのは、イベントを見て回る余裕がないことです。複数人で合同ブースにすれば、トイレ休憩くらいは回せるかもしれません。個人だと不可能です。ここでもイベント主催者が協力するべきだと僕は考えています。まず、日本からブース参加する人たちをプログラム冊子などで積極的に取り上げるべきでしょう。日本のファン/クリエーターと交流できるのはそれだけで価値があります。そして、それはひとつのイベントプログラムと呼んでもいいのかもしれません。ある意味、公式プログラムに「格上げ」すれば、例えば、一定時間ブースを代わりに見てくれる店番的なスタッフを手配してもらうのも検討してもらいたいものです。そうすることで、現地のクリエーターのブースを見て回ることができます。作品をネタに交流することも可能でしょう。交流というと難しく聞こえるかもしれませんが、作品を指さして「好き」と伝えてみてください。それだけでも場は盛り上がります。
これは、僕が考えている草の根オタク交流の一例です。ドイツだけでなく、他の国でも状況はそれほど変わらないと思います。ただ、日本のアニメや漫画による国際交流は本当に楽しいんですよ!これは20年以上経った今でも変わりません。この素晴らしい事実をどうすればより多くの人に体験してもらうことが出来るのか、僕はこれからも考え行動していくことでしょう。
年の瀬です。急遽寄稿のお誘いをもらい書いています。僕からは、表題の件を超大急ぎでご紹介したいと思います。
今年もっとも大変だったのは、7月にポツダムで開催された「アニメメッセ・バーベルスベルク」でした。前回の夏コミでもそのあたりの模様は一部お伝えしたので今回はそれ以降を振り返ってみます。
7月といえばフランクフルトの「Cosday²」が再開しました。「シンセサイザーV」という合成音声に関するパネルで通訳を、ボーイズラブに関するトークパネルで聞き手役を務めました。ステージでドイツ語を話すのは正直大変ですが、ドイツのファンたちの顔を見ながら、彼ら彼女らが笑ったりする反応を見てると、本当にリアルイベントが再開してよかったとシミジミと感じました。
9月はカッセルの「Connichi」に参加。こちらは、「有志によるドイツ語圏最大」を謳うイベントです。20年近く開催されて歴史もありますが、来年は同じヘッセン州でかつ州都でもあるヴィースバーデンに会場を移すと発表がありました。僕自身、10年以上にわたり、秋といえばカッセルの「Connichi」というほど、様々な枠組みで協力してきました。ドイツのアニメファンイベントの歴史にも、ひとつの区切りがついたのかと感慨深いものがあります。しかし、イベントの実行委員会も世代交代したので、新しい取り組みを応援したい気持ちもあります。歴史的建築物の「コングレスパレス」という絢爛豪華な会場からモダンでシンプルな見本市施設に移るのはやっぱり残念ですけどね!
2023年のドイツのアニメイベントではどのようなオタク文化による日独交流ができるのか、今はまだ準備中の段階ですが、そのうちツイートすると思いますので、ぜひ楽しみにしておいてください。
以上、秋アニメのヒット作のひとつ『ぼっち・ざ・ろっく!』のアルバムを聴きながら
(写真1)
「今ここにいる全員が参加できるように1ユーロから始めるぞ!」
司会者の説明に来場者の多くが手を挙げて参加を表明し開始した、チャリティー・オークション。その行く末をステージ上で見守ったのはアニメ監督の羽原信義氏でした。
彼の神妙な面持ちは、会場のいたドイツ人たちが共感するその気持ちを感じ取ってのものだったかもしれません。たとえ現地のドイツ語は分からなくても。。。
というわけで、ドイツのオタク事情をレポートしてきた筆者ですが、今回はドイツのポツダムで開催されたアニメイベント「アニメメッセ・バーベルスベルク」(以下アニメメッセ)のもようをお届けします。会場には7月15-17日の期間、1万5000人(3日間のべ)を超えるアニメファンが集まりました。
(写真2)映画をテーマにしたテーマパークが会場です。
閉会式で実施されたのが、羽原監督によるイラストが出品されたこのオークションです。
少し長くなりますが、前日譚を語らせてください。きっかけは、2019年にまで遡ります。この年、筆者はフランクフルト近郊の学校で子どもたちを前に「アニメ文化は世界を平和にする」という内容の特別授業を行いました。ドイツの地元紙にも取り上げられたこの特別授業は、のちに筆者が日本に向けて日本語で紹介しました。それを読み、共感し、ご連絡を下さったのが羽原信義氏でした。同じく2019年のことです。
そこで筆者は、アニメ監督と相性のよいイベントとして2020年の「アニメメッセ」への出演を打診し、了解を得ました。しかし、コロナ禍により2020年だけでなく、翌2021年の2度にわたり開催は見送られました。一方で、アニメ文化による国際交流を途絶えさせてはいけないという思いは双方に消えることはなく、関係者一同が招聘実現を願っていました。
そして、迎えた2022年3月。折しもロシア軍によるウクライナ侵攻により、ポツダムの隣町のベルリンには連日大量の避難民が押し寄せて来ていました。
アニメメッセはというと、ポツダム市の保健当局、会場となる映画パーク・バーベルスベルクの運営者との何度目かの協議を経た結果、大規模イベント開催要件の緩和を受けて2022年7月の開催にGOサインが出たばかりでした。
そこへ突然の悲報が襲いかかります。ポツダム市がウクライナからの避難民を映画パーク内の文化施設「メトロポリス」に受け入れると発表したのです。アニメメッセのメイン会場です。コロナ禍の次は戦争によりアニメメッセの開催が危ぶまれました。
しかし、4月頭にはイベント主催者と施設運営者で、「メトロポリス」の前庭に大型テントを設営することで妥結。合わせて、希望する避難民全員をアニメメッセに無料招待することが決められました。
このことは、羽原監督にもすぐに伝えられ、コロナ禍により停滞する国際交流の復活に加えて、もうひとつの渡独理由ができました。避難民支援への協力です。
冒頭のチャリティーオークションに話しを戻しましょう。出品されたイラストは会場内で描かれました。羽原監督は会場で自身のアニメ業界でのキャリアを紹介する特別トークパネルを実施しました。パネル自体、とても貴重な情報が満載で詳らかに紹介したいところですが、紙幅の都合それはまた別の機会に委ねます。
さて、そのパネルで後半に設けられたQ&Aコーナーで質問に答えながら、事前に少しだけ下書きをした紙に10分ほどで描き上げたのがこのイラストです。
(写真3)
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このアニメッセには羽原信義氏と一緒に羽原久美子氏も招聘されました。同じくアニメ監督です。羽原久美子氏はアニメーションの基礎を学ぶワークショップを開講しました。実際に課題を与えて作画を体験してもらおうという趣旨です。会場で参加者を募り、10人ほどがステージ前に用意された机で作画に取り組みました。
会場で参加者を募ったとき、ウクライナからの避難民を優先したいと司会者に伝えてもらいました、ウクライナ語で。実は司会者は戦争の前からドイツに住むウクライナ人で自身も支援活動をしていると筆者は聞いていたのです。羽原信義氏と話した結果、ウクライナの子どもたちにアニメの楽しさを知ってもらいたい、そういった意図でのアナウンスでした。結局のところ申し出る人はいませんでしたが、ウクライナに思いを寄せているという事実は司会者や来場者には届いたと思いたいところです。
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チャリティー・オークションの行方はどうなったのでしょう。冒頭で売上はウクライナからの避難民の支援活動に寄付される旨が説明されました。オークションは盛り上がり、イラストを持ち帰ったのはアニメ『スパイファミリー』のヨルのコスプレをした女性の方でした。最後まで競り合った男性もまたイラストは要らないが寄付はさせて欲しいと申し出るなど、ウクライナ支援の思いは広く共有されたように思われたのでした。。。
(写真7)会場ではサイン会も開催されました。色紙には両監督描き下ろしによるイラストが印刷されています。ドイツ語と日本語が堪能な通訳者もウクライナ人でした。
国連の難民問題に関する機関UNHCRによると、7月26日時点でウクライナからドイツに避難した人は90万人を超えています。
ドイツで不自由な生活を余儀なくされているウクライナ人たちに、日本のアニメ文化はどういった貢献ができるのでしょう?戦争を止めることは難しいが、戦争の被害者を支援することができるのではないでしょうか?
そういった思いを関係者一同で共有し、取り組んだのが筆者にとっての今年のアニメメッセでした。筆者自身、戦争の早期集結を願うばかりですし、こういった取り組みは2度とやりたくないです。しかし、戦争が終わらない限り、支援活動を止めては行けないと決意を新たにしました。
アニメ文化が世界平和に貢献できる方法について、さらなるアイデアが求められているのかもしれません。
(写真8)ポツダムのマルクト広場に立つ羽原信義・久美子両監督。
>>Note版(写真あり)
はじめに
コロナ禍でアニメファンが集まるイベントはオンライン開催に移行し、その後、リアル開催に戻りました!あー、よかった!と言いたいところですが、実はそんな単純な話しではないというのが今回のお話しです。ドイツの事例から見えてきた観点を時系列に並べて整理してみます。
「ドイツにおける日本のポッポカルチャー事情」は僕のライフワークといってよいテーマですが、今回はもう少し自分との関わりとの中でこのコロナ禍を現時点まで振り返ってみたいと思います。
(写真:クリエーターブースが連なるホール。2021年夏のドコミにて撮影)
まだ対岸の火事だったドレスデン
始まりは2020年2月下旬です。ドイツではほぼ年間を通じて、アニメファンが集まるイベントが開催されてきました。各イベントは競合しないようにある程度、地域や時期で棲み分けがされています。2月下旬はドレスデンでDeDeCo(デデコ)というイベントが開催されています。デデコは、ドレスデンで途絶えていたアニメファンイベントを復活させるべく組織された新興のイベントです。当初は高校(ギムナジウム)で開催していましたが、近年は会場を見本市施設に移すなど伸びているイベントのひとつです。
2020年2月下旬といえば、イタリアや南フランスの感染が報道されつつありました。ドイツでもバイエルン州で最初期の感染が報告されるなど、警戒度は高まっていました。ドレスデンはザクセン州なのでバイエルン州の北に位置しています。近くはありますが、まだまだ対岸の火事を眺めるようなムードだったのではないかと思います。2021年の秋から冬にかけての感染拡大ではザクセン州はドイツ国内で最も深刻な状況に陥っています。中央政府の感染予防対策に批判的な政治的な意見が多く、それとの関連も指摘されていることを考えると、もし、行政がデデコの開催を禁止したとしても、デデコは開催を強行していたかもしれません。
こじつけのような見方ですが、ザクセン州のドレスデンがコロナ禍前の最後のイベントだったことは、何かしらの象徴的な意味があるのではと思いたくなります。
社会を分断したライプツィヒの変
2020年3月にはライプツィヒの書籍見本市が開催予定でした。ここは近年、マンガ出版エリアをManga Comic Convention(MCC)として独立させ、書籍見本市と併催されてきました。MCCでは、直前のベルリンで予定されていた旅行博の開催判断に注目が集まっていました。折しも、ドイツ国内に感染が広がりつつあり、イベントの制限が議論されていたのです。旅行博は直前で開催を断念し、このライプツィヒのMCCも直前でまさかの中止となりました。
そこで起こったのが、中止の決定を不服とする参加予定者だったファンたちによる独自イベントです。当初Corona Con(コロナ・コン)と呼ばればこのファンの集まりは、地元紙の報道などにより、ドイツ各地のアニメ・マンガファンの知るところとなったわけですが、非常に賛否が分かれました。事前に手配していたホテルや移動が無駄になってしまうわけですから、特に若い人たちにとっては友人たちとイベントを楽しむ機会を奪われたことに加えて、金銭的なダメージも大きかったと思います。ある人は共感を示し、ある人は非難するわけです。オタクという社会の分断を見た瞬間でした。
世間では「オタクはXXXな人たちだ」とステレオタイプで語られることがあります。しかし、意見が割れた界隈を見ていると、そんな紋切り型の見方が通用しないことがよく分かります。
裏方の人として名誉ゲストに関する企画に協力
少し自分の話しをします。日本のポップカルチャーによる日独の文化交流を促進させたい、という動機のもと様々な活動を行っていますが、ライター業とコーディネート業は相補的な欠かすことの出来ない要素だと見ています。つまり、僕は裏方としてイベントの企画にも協力しているのです。主に日本からの名誉ゲストの企画を扱っています。日本からクリエーターを招待し、イベントで実施する企画内容を考え、提案し、実行するまでを多くの場合で担当しています。
ライプツィヒのMCCでも名誉ゲストを招待する企画が動いていました。マンガ家を日本から招待し、サイン会やライブドローイングを準備していました。既存の商業作品の意匠を借りることになっており、出版社の版権事業部との権利処理も終わっていました。偶然にも、関連作品のライブコンサートが計画されており、名誉ゲスト企画の効果を最大化するために、東奔西走していました。結局、企画は無期限の延期となりましたが、当時の座組は復活しそうにもなく、この企画はお蔵入りになったといってもよい状態です。
ドコミのオンライン化という「進化」
時間軸を進めましょう。2020年5月にはデュッセルドルフの大型アニメ・マンガファンイベントDokomi(ドコミ)がリアル開催を断念し、オンラインイベントを実施しました。リアル開催を断念したといっても、同年の9月に延期され実施にこぎつけています。(このあたりも別所で書いているので興味のある方は読んでみてください)
ドコミのオンライン化は、他のイベントが実施するリアル開催の代替物としてのオンラインイベントとは一線を画していたという点は今でも注目すべきだと思っています。この点も各所で書きましたが、2020年5月のタイミングでバーチャル空間を用意し、アバターを通じた交流を提供していたのは中々に先進的な事例だと思います。
バーチャル空間でのイベント体験や交流自体は目新しいものではありません。しかし、筆者の考えでは、そこにはバーチャル空間での交流や体験に元々興味があるような技術ファン界隈の人たちが集まっていたのではないでしょうか。ドコミは言ってしまえば、その外側にいたリアルで交流、体験したい人たちをバーチャル空間に呼び込んだわけです。
代替物としてのオンラインイベントが関係者のライブ配信や過去のイベント映像の配信にとどまっていた状況を考えると、ドコミのバーチャル空間はインタラクティブ性で一歩先に進んでいました。
マンガ家の原画展と関連企画というフォーマット
このドコミで実施する予定だったのが、マンガ家の原画展と関連企画という自分にとっては新たなフォーマットへの挑戦でした。これは日本からマンガ家を招待し名誉ゲストとしてイベント訪問してもらい、会場で作品に使用されたオリジナル原稿を展示するものです。展示にはコンセプトが必要で、およそマンガ制作の技術と主題を大きなテーマとして掲げて、原稿を眺めてもらい、マンガ家にパネルディスカッションに参加してもらい来場者とマンガ制作について一緒に考える企画でした。ドコミは秋に延期され開催されましたが、日本から名誉ゲストが参加できる状況ではなく、この企画も現在延期状態にあります。
アニメ監督と一緒に何ができるのか?
ということを考えながらゲスト企画を準備していたのが2020年7月にベルリンのお隣りポツダムで開催予定だったAnime Messe Berlin(アニメメッセ・ベルリン)です。なお、このイベントは諸般の事情により現在はAnime Messe Babelsberg(アニメメッセ・バーベルスベルク)に改称しています。
アニメ監督といっても様々なキャリアを背景にした人がいると思いますが、予定したいた方はアニメーター出身のアニメ監督でした。ただのサイン会に終わらない企画を内容を考えていたわけです。同時に横の広がりについても試行錯誤していました。例えば、アニメ監督と一緒に作品の主題歌を歌ったひとたちを呼べば、ライブコンサートを提供できるし、作品の関連グッズを販売するためにグッズメーカーに協力を要請したりといった具合です。
様々な関連企画を用意することで、名誉ゲストの招待効果を最大化させようというものです。こちらの企画も現在は延期中です。
日本から名誉ゲストが来ないと成立しないイベントモデル
2020年の夏、7月末から8月頭に開催される予定だった老舗の大型商業イベントAnimagiC(アニマジック)は、コロナ禍で長所が短所になったイベントかもしれません。アニマジックは運営母体がアニメ作品を紹介する老舗雑誌『AnimaniA』です。雑誌ではアニメ作品を紹介するために、制作関係者などにインタビューすることが多く、そういったやり取りの中から日本のアニメ業界とのパイプも太く、イベントの名誉ゲストとして、アニメ監督、アニメーター、声優、歌手などなど、多数の制作関係者を日本から招待しています。アニマジックは近年、収容人数のより多いマンハイムに会場を移し、動員数を伸ばしつつありました。成長の背景には、旬のアニメに関わるクリエーターを間近に見ることができるというのは、は大きなメリットだったはずです。日本とドイツの往来が制限される中、アニマジックも配信の活用を試みていますが、リアルイベントの代替物にとどまっているのが現状です。
企業と有志の活動による違いで見られた変化
2020年の9月には老舗大型イベントひとつConnichi(コンニチ)がリアル開催を断念しました。この頃になると、イベントの開催/延期の判断にひとつの傾向があるように思えてきました。それはイベントの実行委員会が企業ベースなのか、有志のスタッフによるボランティベースなのかということです。
コンニチは翌年2021年のオンライン開催も早々と決断しました。安心安全のための最良の選択肢ではあるかもしれませんが、さくっと決めていしまう姿勢にいくばくかの素っ気なさも感じました。一方で、ドコミはリアル開催にこだわり、コンニチが開催しなかった9月にドコミをリアル開催させています。開催こそ断念しましたがアニメメッセ・バーベルスベルクも強い開催の意向を持ってました。その違いはやはり、イベントの開催が彼らの本業であるかどうかという点なのではないかと思うのです。ボランティア運営であれば、スタッフは別に仕事をもっている人が多いようです。または生活費を稼ぐ必要のない学生です。一方で、イベント開催が商業ベースの場合は、生活のためにお金が必要なわけです。ドコミがオンライン化で新しいことに積極的に取り組んでいるのも、こういった事情が背景にあるように思えます。
オンライン化でドイツから世界を目指すことになった
さて、2021年になってもパンデミックの状況に変化はなく、引き続き日々の感染者数に一喜一憂するだけですが、再びドコミの動向に注目が集まりました。2021年は例年通りの5月の開催を目指していましたが、夏に延期を決定。その代わりにオンラインイベントを開催しました。バーチャル空間を用意したその手法は先にも触れましたが、開催テーマをバーチャル・ユーチューバー(VTuber)とし、英語圏で人気のVTuberのキャスティングに成功したのです。これにより、世界各地のVTuberファンがドイツのオンラインイベントに参加することになりました。ドイツの参加者にとっては、VTuberというトレンドを世界レベルで体験できるリッチな内容になっているだけでなく、同時にドイツ国内のVTuberにも出演機会が与えられ、彼女たちにとっては世界中の人たちに見てもらえるという大きな舞台を手に入れたわけです。つまり、ドコミはイベントがオンライン化するなかで、最も相性がよいコンテンツを選び出し、取り込んでみせたというわけです。
オンライン化でリアルイベントがパワーアップした
これだけでも十分な驚きですが、さらに驚かされたのが夏にリアル開催したドコミです。また、ドコミの話しかと言われそうですが、明るい話題が少なすぎるのです。どうかお許しください。
すでに前年のコロナ禍の中でも開催したという実績から学び、夏の開催に生かしただけでも、他のイベントより一歩先に進んでいるわけですが、名誉ゲストとして5月のオンライン版に続き有名VTuberの小鳥遊キアラさんを招待し、ライブイベントをステージで開催しました。つまり、オンライン化で新たなテーマとしてVTuberを開拓し、それをリアルイベントに取り込んだというわけです。これによりリアルイベントとしてのドコミはそれまでなかったVTuberという新たな日本発のジャンルを手に入れ、レパートリーが増えることで、イベントの充実に貢献したのです。
ドイツ国内にも名誉ゲストは存在する!
さて、蛇足かもしれませんが、2021年夏にリアル開催されたドコミの会場には僕も参加しました。直前まで日本から名誉ゲストを招待しようと動いていましたが、最終的にドイツ国内でなんとかしようとなりました。実は日本のマンガ家でドイツ国内在住という方が近年増えつつあるようなのです。マンガ制作もデジタル化が進み、ドイツにいながら日本の出版社にマンガ原稿を入稿できる環境が整いつつ有り、そういった働き方が可能らしいのです。そういった中、マンガ家の奈樫マユミさんと話しがまとまり、僕もなんとかコーディネート業を実施することが出来ました。
来たるべき2022年は、、、
最後に明るい見通しの話題でも書いて終わりたいところですが、残念ながら、そんなものはありません。見通しはいまもって不透明です。もし、僕からひとつだけ皆さんにお願いすることが許されるのであれば、それは国外のイベント参加を諦めないでくださいという点に尽きます。そして、いつか来るその時のために準備を整えて置いてください。情報収集は日本にいてもできるのです。。。必要なら僕も手伝いますので。
こんにちは、フランクフルトのKatahoです。今回は6月22日、23日に開催されたアニメコンベンションWie.Mai.KAIについてとなります。
(Wie.Mai.KAIの入り口前で遭遇したコスプレイヤー 撮影:Kataho)
イベント名のWie.Mai.KAIは、フランクフルトを有するヘッセン州の州都であるヴィースバーデンとその対岸にあるラインラント=ファルツ州の州都マインツから、それぞれWieとMaiを、KAIは集まりという意味での「会」からとられています。会場は、フランクフルト近郊のフレアスハイム(Flörsheim)の市民ホールで、開催規模は2000人程度です。
会場ではアマチュア劇団によるアニメを翻案した演劇や、地元のイラストレーターによるブースが並んでいました。(下の写真参考)
このほかにも、ワークショップ部屋がカラオケ、グッズ販売業者のエリアなど、コンパクトなイベントながら一通りのプログラムを備えた総合イベントとなっています。
(メイドカフェで働くメイドさん。メイドカフェもすっかり定番プログラムとなりました。撮影:Kataho)
さて、このWie.Mai.KAIでは、最近、ドイツのイベントでよく見かけられるという(一部界隈で話題の)日本からイベントに参加し続ける日本人なかたにさんにお話をうかがうことができました。
せっかくの機会とうことで、日本から海外のイベントに参加する魅力とは何かについて聞いてみました。
Kataho (以下K):こんにちは!またお会いしましたね!今日は、日本人として海外の日本ファンによるイベントの楽しみ方についてお聞きしたいと思います。よろしくおねがいします。
まず、簡単に自己紹介をお願いします。
なかたにさん(以下N):こんにちは!
まずは自己紹介ですが、普段は岡山で情報通信関係の仕事をしています。
中学・高校時代はラノベにはまり、大学時代はコミケに参加するなど所謂オタクかもしれません。
海外のイベントに初めて参加したのは2012年7月のファンシーフロンティア(台湾の同人誌即売会)で、理由はたまたま仕事で訪問していた大学の構内で開催されていたのを見かけて面白そうだなと思いまして(笑)
ファンシーフロンティアを切欠に他の国のイベントにも興味を持ちまして、その後はシンガポールのAFAやDoujima、イタリアのLucca Comics、フランスのJapan Expo、スペインのSalo del Manga、オランダのAnimeCon、香港のCPなど各地の同人誌即売会からアニメコンベンションまで幅広く参加しています。
K:たくさん参加されてますね!ちなみに、ドイツはどのイベントに参加されましたか?
N:ドイツではドコミ(デュッセルドルフ)、Connichi(カッセル)、MANGA-COMIC-CON(ライプツィヒ)、Anime Messe Berlin(ベルリン/ポツダム)、Wie.MAI.KAI(フレアスハイム)、CosDay(フランクフルト)、フランクフルト・ブックフェアなどに参加しています。
その中でも特に印象に残っているのはConnichiですね。
出展者と購入者、サークル参加と一般参加に分かれるイベントが多い中、ドイツのイベントは全体的にファン同士の交流が盛んで、その中でもConnichiはファンが会場に隣接した公園に集まりピクニックでもするかのように敷物を敷いて仲間との再会を喜び、団欒している姿を沢山目にしました。これは日本ではあまり見ることのない光景だなと。
(Connichiの会場隣の公園の様子(2018年)、撮影:Kataho)
K:なるほど、たしかにそうですよね。僕も以前、Connichiのそういった特徴が気になり、「巨大なオフ会」であると表現したことがあります。
ところで、中谷さんにとって、海外の日本ファンたちのイベントの魅力ってなんですか?本来は、現地のファンが現地のファンのために実施しているイベントですよね?
日本人が参加しても楽しめるものなんでしょうか?
N:そうですねー、はじめのうちは出展内容やコスプレしている参加者を見て、流行の作品や人気のキャラクターなど、日本との違いを見つけるだけで面白かったですね。
売られているグッズやフィギュアなど日本では流通していないものがあったりして興味深かったですし、コスプレもキャラクターへの愛やリスペクトが感じられるとても完成度の高い人が多くて驚きました。
そのうち参加している現地のファンとも話をするようになり、自分の趣味や日本で流行っているものを伝えたりと、お互いに情報交換するのが楽しくなってきました。
K:ところでドイツ語は話せるんですか?ドイツのファンたちとコミュニケーションをとるのって難しくないですか?
N:ドイツ語は話せません。
ドイツの若者はだいたい英語が話せるので、基本的に英語でのコミュニケーションになりますね。たまに日本語ができるドイツ人オタクに出会うと捗ります(笑)
まずはお互いに好きな作品を挙げてみて共通の話題を探す感じです。
最近はドイツでもネット配信を通じて日本と同じ時期に同じアニメを観ることができるようになっていたり、日本と同じソーシャルゲームが流行っていたりするので最新のアニメやゲームの話題で盛り上がることが容易になっていますね。
K:そうなんですよ!作品タイトルを言って、向こうも知っていれば、内容を説明する必要はないんですよね。なのでお互いに英語が苦手といっていても、話しは意外と通じるんですよね。そしてそれが一番楽しい!
ところで、逆に何か困ったことってありました?
N:前述の通り好きな作品を挙げるわけですが作品タイトルが日本語とドイツ語(英語)で異なるのは困りましたね。
例えば「鬼滅の刃」ですが海外では「Demon Slayer」です。
熱心なファンは日本語タイトルや"Kimetsu"などの略称がそのまま通じることもあるのですが分からなければお互いにスマホで検索した作品画像などを見せ合って分かり合うことも多々あります。
K:なるほど。ドイツで人気の「進撃の巨人」も「アタック・オン・タイタン」ですからね。以前なら雑誌やグッズを持参して見せたところですが、今は、スマホがあれば解決できる部分は多いですよね。翻訳の性能も上がりましたし。
もし、これから初めてドイツなど海外イベントに参加してみたいという人がいたら、どういったことをアドバイスしますか?
例えば、これ持って行ったほうがよいとか、これだけは事前にチェックしておいたほうがよいことって何かありますか?
N:事前にチェックですか。
コミケの前にカタログでサークルをチェックするように、イベントのWebサイトに上がっているプログラムをチェックして興味のあるブースやステージをリストにしておくと限られた時間を有効活用できますよね。
あとは自己紹介というか過去の作品も含めて自分が好きなものをスムーズに挙げられるよう予めメモしておくと良いかもしれません。
いざ初対面の外国人と英語で話すとなると緊張して作品タイトルを思い出せないということがありますので(笑)
K:たしかに、それは大事ですね!
今日は色々とお話しありがとうございました。また、どこかのイベントでお会いしましょう。
★ ★ ★
今回のお話はここまでとなります。最近、イベントにかかわることが多くなったからか、イベントのあらゆる風景が「当たり前」だと感じるようになりました。そこであえて、日本人の方にイベントの魅力を語ってもらいました。いかがでしたでしょう?読者/同志の皆さんが「共感」や「気づき」を得ることができたなら、僕にとって嬉しい限りです。
2018年12月4日、ドイツのケルンにて初音ミク公式コンサートが初めて開催されました。
筆者はドイツにおける初音ミクおよびボーカロイド文化に長年にわたり注目しており、今年は初音ミクの公式コンサートが開催されひとつの節目を迎えたように感じています。そこで今回は、初音ミクを中心とするボーカロイド文化に関して、ドイツでは過去どのようなイベントが開催されてきたのか、時系列で整理してみたいと思います。
はじまりは2010年のカッセル、、、
Connichi 2010(読み:コンニチ、開催地:カッセル)にてボーカロイドファンパネル「みらいのねいろ」開催。
コンニチはアニメファンによるアニメファン向けのイベントいわゆるアニメコンベンションです。日本のボカロファン有志によるファンパネル「みらいのねいろ」では、日本のボカロ楽曲のPVのトレンドを知ってもらおうというコンセプトのもと、作者のコメントを添えて音楽動画が紹介されました。日本からはゲストとしてZANEEDSのトリノスさんが参加。
2011年、ふたたびカッセルへ、、、
Connichi 2011(コンニチ)にて、「みらいのねいろ」主催による講演2本実施。
1本目は、歌声合成技術を開発したYAMAHAの剣持秀紀さんによる講演「ボーカロイド:ボーカロイドの父として」(英語)。2本目は、ハローキティのボーカロイドなどを手掛ける会社AHSの尾形友秀さんによる講演「誰でもみんなクリエイター!日本のクリエイター事情について」。剣持氏は開発者として歌声合成技術の解説を行う一方で、尾形氏はボカロを含めた日本における創作の現場を俯瞰して見せました。
ドルトムントにて開催された日本政府による「文化庁メディア芸術祭・ドルトムント展2011」にて初音ミクが登場。
2012年、ファンによるファンコンサート技術が日本からドイツへ、、、
5月、フランクフルトの日本映画祭Nippon Connection 2012(ニッポンコネクション)内で「みらいのねいろ」協力によるボカロ講演「誰でも作曲家:日本のユーザー・クリエイティヴィティ」が開催。登壇者はAHSの尾形代表。
ボーカロイド文化を広く伝えることを目的に、AHS社のボーカロイドにとどまらず初音ミクなど他社のボーカロイドも紹介。ハイライトのひとつは、ボカロファンのアミッドPによるファンコンサート・システム「アミッドスクリーン」のデモンストレーションが欧州で初めて実施された点です。また、講演はニコニコ動画にてライブ配信されました。
6月、ヴィースバーデン・マインツ地区アニメコンベンションWieMaiKai(ヴィーマイカイ)にて、「みらいのねいろ」公式イベントとして、「ボーカロイド3Dパフォーマンス」(アミッド上映会)と「ボカロ交流会で使える日本語講座」実施。
7月、フランクフルトのアニメコンベンションCosday(コスデイ)にて、先月の企画を再び実施。「みらいのねいろ」公式イベントとして、「ボーカロイド3Dパフォーマンス」(アミッド上映会)と「ボカロ交流会で使える日本語講座」が実施されました。
このあたりの事情については、2012年の夏コミ同人誌「K.Press」(白坂啓さん)にて、「フランクフルト近郊の日本関係のイベントについて‐ボカロ・イベント『みらいのねいろ』活動報告」にまとめました。
8月、フランクフルトのコスプレ衣装店「Kostuemspiel」にて、「みらいのねいろ」公式イベント:ボカロ交流会「ボカロでクリエイティブ!」開催。近郊のボカロファンを集めた交流会。ゲストとしてAHSの尾形代表が参加し現地から同社の公式生放送が行われました。
9月、再びカッセルのアニメコンベンション、コンニチにて、「みらいのねいろ」公式イベントが開催。「ボーカロイド3Dパフォーマンス」(アミッド上映会)、特別ゲストによる講演が行われました。この講演は、前半をアスキー総編集長(当時)の福岡俊弘が初期のボカロ文化の盛り上がりを、後半は、ボカロPの「さつき が てんこもり」さんが創作の現場を紹介しました。
同9月、フランクフルトの日本紹介イベント「フランクフルト日本デー」(主催・独日協会フランクフルト)にて、「みらいのねいろ」公式イベントとしてボーカロイド紹介ブースを出展。過去ポスターの展示や動画の上映が行われました。
2013年、ボカロはDJイベントに、、、
5月、デュッセルドルフのアニメコンベンション「Dokomi」(ドコミ)にて「みらいのねいろ」公式イベントとしてワークショップ実施。
再びAHSの尾形代表がゲストとして招かれ講演「ファンプロジェクトからプロダクトへ~夢を実現する~」を実施。ボーカロイドを含むキャラクター商品開発の現場を取り上げました。また、サプライズとして同社のボーカロイド「結月ゆかり」のドイツ語インターフェイス版の発売が発表されました。ワークショップでは、ボカロPのかごめPが楽曲の制作からボーカロイドを使用した歌声パートの作成までをレクチャーしました。かごめPは同イベントにて開催されたDJイベントにもDJとして参加しました。
6月、ドイツ、ヴィースバーデン・マインツ地区のアニメコンベンションWieMaiKaiにて、「みらいのねいろ」公式イベントとして、「ボーカロイド3Dパフォーマンス」(アミッド上映会)と「ボカコンで使える日本語講座」実施。
昨年と同じような企画ですが動画が一新されました。また、動画投影に使用されたアミッドスクリーンも幅を拡張した改良型が使用されました。日本語講座のボカコンについて後述します。
同6月、静岡で開催された第00回世界ボカロ大会にて、「日独交流企画:ドイツ・ボカロファン決定戦」実施。同イベント内の企画「ボカロ学会」にドイツ代表パネリスト参加。
前者の企画では、先の日本語講座にてボカロ交流で使える日本語を学んだ参加者も参加し、フランクフルトと静岡の会場をつなぐネット中継が実施されました。
9月、「ポ」ーカロイド事件。
2013年のコンニチではスイスのボカロファン団体がファンパネルを実施しました。透過スクリーンを使用したライブ音楽によるファンコンサートを計画していた団体によるボーカロイドを紹介する内容でした。この発表内では、紹介されたボーカロイドが海賊版のポーカロイドである旨を来場者が指摘し議論となったそうです。この団体はその後、ホームページを閉鎖し活動を休止したようです。
10月、ベルリンのアニメコンベンションMMCにて、「みらいのねいろ」公式イベントとして、「ボーカロイド3Dパフォーマンス」(アミッド上映会)とファンパネル実施。
アミッド上映会の首都ベルリンへの進出でした。ファンパネルにはドイツのボカロファン/クリエイターが参加しそれぞれのテーマについて発表、様々なサブジャンルを持つボカロ文化の広がりが紹介されました。また、日独両国のイラストレーターによるポスターも制作されました。
また、同イベントには、ボカロPのふわりPが日本から招待ゲストとして参加しました。ファンとの交流を楽しんだほか、ステージでライブパフォーマンスを披露。招待に合わせて制作された初音ミクによる楽曲「よんでくれてありがとう」が発表されました。
10月、昨年同様フランクフルトの日本体験イベント「フランクフルト日本デー」(主催・独日協会フランクフルト)にて、「みらいのねいろ」公式イベントとしてブース参加。ポスターや動画で活動が紹介されました。
2014年、八王子Pがドイツへ、、、、
5月、カールスルーエの日本紹介イベントJapan Tage(ヤーパンターゲ)にて、「みらいのねいろ」公式イベントとしてDJパーティとピアノ生演奏付きワークショップ開催。ゲストはZanioさん。
ワークショップでは、初音ミクにドイツ語の歌を歌わせ、各種エフェクトのかけ方が紹介されました。最後には地元の日本人ピアノ奏者の協力により初音ミクの歌声に合わせたミニ演奏会も実施。その後のDJパーティではZanioさんがロングプレイを披露しました。
6月、デュッセルドルフのアニメコンベンションDokomi(ドコミ)にて、「みらいのねいろ」公式イベントとして、トークパネルを開催。DJパーティにも協力。ゲストは八王子Pさん。
トークパネルでは来場者の中からファン代表として3名がステージに上がり、八王子Pに質問をしました。DJパーティでは八王子PがDJを実施。サイン会にも長蛇の列ができました。
7月、再びヴィースバーデン・マインツ地区のアニメコンベンションWieMaiKaiにて、「みらいのねいろ」公式イベントとして、パネル「ボーカロイド3Dパフォーマンスの仕組み」実施。
同パネルでは、アミッドスクリーンの次に注目されていた新しい安価な投影システム「ポリッドスクリーン」が紹介されました。
2015年、ボカロの「語り方」がドイツに
4月、ケーニヒスルッター(ニーダーザクセン州)のアニメコンベンションAnime Marathon(アニメマラソン)にてボカロファンパネル「みらいのねいろ」実施。
テーマはボカロ文化のさらなる展開として、日本における文芸批評や学問的な切り口によるボカロ文化の「語り方」が取り上げられました。
5月、デュッセルドルフのドコミにてボカロPのマチゲリータさんによるステージパフォーマンス実施。
マチゲリータさんによる歌唱ステージ。自身のボカロ楽曲のセルフカバーも披露しました。
10月、再びベルリンのアニメコンベンションMMCにて、ボカロファンパネル「みらいのねいろ」とボカロPのふわりPによるライブパフォーマンス実施。
ファンパネルのタイトルは、「初音ミク、ボーカロイド、オープン・コラボレーション」。初音ミクを中心とした文化の広がり方についての発表でした。事例紹介のひとつとしてサブジャンルのひとつ、「踊ってみた」が取り上げられドイツの踊り手たちが自ら紹介しました。
ふわりPのライブパフォーマンスでは、ドイツの踊り手たちが協力。ふわりPの楽曲のダンスをステージで披露しました。また、2013年に制作されたオリジナル曲「よんでくれてありがとう」の2番が新たなに作られ会場で初披露されました。
2016年、公式イベントが続々登場、、、
2月、初音ミクのアートインスタレーション「Still Be Here」初演。
ベルリンの現代電子音楽の祭典CTMフェスティバルにて実施されました。
6月、ベルリンのアニメコンベンションAnime Messe Berlin(アニメメッセ・ベルリン)にて、AHSによる公式コンサート開催。
日本から結月ゆかりの声を担当する声優の石黒千尋さんがゲスト参加し。ステージ上でボカロキャラクターとの掛け合いを披露しました。
8月、初音ミクのオペラ作品「The End」公演。
ハンブルクの国際芸術祭にて渋谷慶一郎による現代オペラ作品が公演され、スイスのメディアなどが報じました。
2017年、さまざまなコラボが実現、、、
5月、デュッセルドルフのドコミにボカロPのBIGHEADさんが参加。
DJパーティでのDJ、ワークショップ、常設ブースの出展がありました。DJ
パーティでは、複数のドイツの踊り手勢がステージにあがり使用楽曲に合わせたダンスを披露し会場を盛り上げました。ワークショップでは、ドイツへの招待に合わせて特別に制作された楽曲の作成プロセスをレクチャーしました。最後には初音ミクの歌声に合わせて、BIEGHEADさんが自らエレキギターを弾くミニライブが実施されました。また、イラストレーターのapapicoさん描きおろしによる日独友好を願った初音ミクのポスターが制作されました。
6月、ベルリンのアニメメッセ・ベルリンでAHSが再びライブコンサート
再び結月ゆかりの声を担当した石黒千尋さんのほか、ボカロPのエハミックPも招待されボーカロイドキャラクターとのステージパフォーマンスを盛り上げました。また、DJイベントには日本からちょむPが参加。さらに、アニソンDJの手配で協力したボカロレーベル、エグジットチューンズがボカロCDの特別販売ブースを設けました。
2018年、そして初音ミク公式コンサートの開催へ、、、
6月、ベルリン・エリア(ポツダム)のアニメメッセ・ベルリンにエグジットチューンズがブース参加。
2017年に引き続きボカロレーベルのエグジットチューンズがDJパーティに協力。イベント内でボカロCDの特別販売を行いました。
12月、初音ミク欧州ツアーの一環としてケルンで公式コンサート開催。
12月4日、ケルンのランクセスアリーナで実施されました。
いかがでしたでしょうか?ドイツにおけるボカロ・イベントを振り返ってみました。
筆者はドイツ以外のボカロ・イベントにも関わったことがありますが、今回はドイツにフォーカスするために割愛しました。また、最後の初音ミクのケルン公演については、別途レポ記事を書きます。併せてご笑覧いただければ幸いです。
最後に一言。ドイツのボカロ文化は初音ミクの公式コンサートが開催されたことにより、日本や他の国々と肩を並べることとなりました。一方でこれはボカロ文化のスタート地点のひとつにすぎないのではという感覚もあります。コンサート終了後、ドイツ語圏のインターネット上におけるボカロ関連のコミュニティでは、活発な意見交換が行われています。今後の展開が気になるところです。
ドイツ最大のアニメ漫画ファンのイベント、ドイツのコミケことドコミでは、今年5月の開催時にDJパーティーが実施された。ベルリンで急成長中の新興イベント、アニメメッセ・ベルリンは、日本から2名のDJを招待しイベントを行った。近年、ドイツのアニメファンイベント界隈では、アニメソング・クラブイベント(以下アニクラ)が増えており、新たなトレンドになっている節がある。今回は、現在の全体像に迫りつつ、過去の事例にさかのぼりながら、未来を展望してみる。
(ドコミのアニクラの模様。2017年)
ドイツのアニクラ最新事情
今年5月のドコミ(開催地デュッセルドルフ)のDJイベントに参加したのは、昨年に引き続き日本からRam Rider。フランスからのMoe Shopと2名のドイツ人DJで会場を盛り上げた。一方、6月にベルリン近郊ポツダムで開催されたアニメメッセ・ベルリンでは、ボカロ音楽レーベル、エグジットチューンズが協力し日本からDJとして松下、ふみろくが渡独している。
そこで急遽、ドコミの共同代表のひとりに聞いてみた。
「とてもよかった。最後までいられなかったけど、もっと長く居たかった。Ram RiderのDJは自分にとってはハイライトのひとつだった。Moe Shopの参加でさらに多くの来場者が集まり、1800人も来たのは今までで一番多い。」と今年のDJイベントを振り返る。
今後の予定については、「今年からMOGRAと共同で準備している。このようなアキバの団体とコラボできてとても嬉しい」と語る。
読者諸兄の皆様はご存知だと思うが、MOGRAは秋葉原のアニメソング・クラブイベントの中心とでも呼ぶべきクラブバー。世界のアニメファンからも一目置かれる存在だ。ドイツのアニメファンイベント界隈では、ドコミは後発ながらデュッセルドルフを中心とする北ライン・ルール大都市圏の豊富な人口を背景にドイツ最大のイベントに成長。アニクラ・イベントもMOGRAとコラボするまでに成功を収めたことは注目に値するのではないだろうか。
(2018年のドコミの参加DJ。公式サイトより)
(アニメメッセ・ベルリン2018のアニクラ企画。プログラム冊子より抜粋)
そもそもヴィジュアル系音楽のパーティーだった
そんなドイツのアニクラ事情だが、少し過去にさかのぼってみたい。2000年代中盤。手がかりとなるのはファン主導の大型イベント、コンニチだ。コンニチでは、今年もアフターイベントとしてDJパーティーが開催されるが、アニメやボカロ曲に交じって再生されるのはJロック。
Jロックと聞いてピンと来ない人もいるかもしれないが、実際は「ディル・アン・グレイ」などいわゆるヴィジュアル系の音楽だ。コンニチのDJパーティーはこの層をメインターゲットとしている。近年ではファン層が重なるKポップもよく再生される。実は、このヴィジュアル系の音楽をメインにしたDJイベントがアニメファンイベントで併催されるものとしては起源といってもよいかもしれない。2000年代中盤には、ヴィジュアル系音楽のクラブイベントがフランクフルトなどでも定期的に開催され、日本ファンが集まった。
ヴィジュアル系音楽の人気はまだあるが全盛期の勢いはない。そういう意味ではコンニチのコンセプトは、少しアニクラのトレンドに寄せた軌道修正の余地があるのかもしれない。
ドイツで広がるアニクラ・イベント
ドイツにおけるアニクラ・イベントはデュッセルドルフのドコミやアニメメッセ・ベルリンにとどまらない。2017年にはコンニチと対をなす老舗大型イベントで商業ベースのアニマジックでも、日本からDJ Kazuを招待。開催地のマンハイムをアニクラにした。
ベルリンではここ数年、地元大型アニメファンイベントの主催団体が、オンガク・マツリ(主催:アニマコ)、コスチューム・ナイト(主催:MMC)を実施している。これらの特徴は、それぞれの団体が主催するメインのイベントとは別の時期に開催している点。なお、メインイベントではアニクラは行っていない。アニメメッセ・ベルリンと合わせてベルリン地域では3団体がアニクラを実施していることになる。さすがクラブ文化の町ベルリンならではといったところだろうか。
ミュンヘンのアニクラ・イベント、カイゾクは元々存在する地元のアニメファンイベントとは独立して開催され音楽をメインとしている。今年は、在ミュンヘン日本総領事館の日本関連イベントのカレンダーにも登場するなど、存在感を増しつつある。
ケルンでは昨年、Jナイトが開催され今後の展開が気になるところ。ドコミの主要DJなどが立ち上げたイベントで、クオリティにこだわった音楽ファン向けのアニクラとして成長しそうな予感がある。また、南西ドイツのカールスルーエの大学内で開催される日本イベント、ヤーパンターゲでは2014年、ボカロPでDJのZanioがDJパーティーに日本から招待され地元のボカロ音楽ファンが集まった。
今年は新たに開催されたのが、3月のライプツィヒ。書籍見本市と併催されるマンガコミックコンベンション(MCC)には10万人近くの来場者がある。その会場で今年初となるDJイベント、オタク・ナイトが実施された。また、フランクフルト近郊の中堅イベント、ヴィー・マイ・カイの運営団体は8月にアニメディスコを開催すると発表した。同団体によるアニクラ・イベントは初の実施となる。
(アニマジック2017年に参加したDJ Kazu。公式サイトより)
(ベルリンのイベント、オンガク・マツリ。公式サイトより)
(ミュンヘンのイベント、カイゾク。公式サイトより)
アニクラに拡大ポテンシャルはあるのか?あります!
現状ですでにドイツ各地で実施されているアニクラだが、この傾向は拡大するのだろうか。ドイツでは現在、大小のアニメファンイベントが乱立している。大規模、中堅イベントだけでも、月に一度程度どこかの町で開催されている。ローカルな地域イベントを加えるとほぼ毎週どこかでアニメファンの集まりがあることになる。そのなかでも、イベント規模の大きさから考えると、今後、アニクラを想定してもおかしくないイベントとしていくつか挙げてみたい。
まずは、ミュンヘンのアニムック。日本からゲストを呼ぶほどの規模なので可能性はある。ドレスデンのデデコはドイツのオタク第二世代の若い人たちが中心となりコスプレ舞踏会や市内コスプレ撮影ツアーなど新たな企画に積極的に挑戦している。南西ドイツ、マインハイムの向いのルトヴィクスハーフェンで開催されるハナミは地域の大型アニメファンイベントとして人気だが、アニクラはまだ実施していない。ボンは過去アニマジックが10年近く開催された背景もあり日本ファンは多い町のひとつ。今後、新たなアニメファン向けのイベントが登場する可能性は高い。バイエルン州北部、フランケン地方のバンベルクのイベントもいわゆる第二世代による運営で財政面も安定しているという噂もある。
あとは、フランクフルト国際書籍見本市ではドイツコスプレ決勝大会が開催されるため、アニメファンが多く集まる。関連エリアは年々拡張されており今後伸びる可能性がある。同じくフランクフルトで開催される、日本国外最大の日本映画祭ニッポンコネクションでは例年DJパーティーが行われている。アニクラ色はないが、提案の予知はあるのではないだろうか。このほかにもハンブルクなど大都市を中心に潜在的な需要はありそうだ。
ドイツでDJをしよう!
最後に筆者からの提案。ドイツではこのように、アニメソングを主体としたDJパーティーが増えている。といっても日本人DJはごくわずか。一方で、日本ではアニクラの普及拡大に伴いアニソンDJが増えているとも聞く。武者修行や腕試し、理由はなんでもよいが、ドイツのアニメファンを躍らせてみるのはどうだろう?
日本の文化は日本人の手で伝えたい、そう筆者は考えます。
僕がドイツのアニメファンイベントに関わるようになった2009年以降、僕は何度かコンニチの会場で後藤さんを見かけている。大ホールの観客席や会場のカフェでお見かけすることはあったが、ご挨拶させていただいたことはなかったのではないかと記憶する。そんな程度の関係で語るほどの思い出は多くはないが、実はツイッター上では何度か絡んでいただいたことがあり、この度の後藤修一さんの逝去に際し哀悼の意味を込めて少し振り返ってみたい。
亡くなられたのは7月19日だそうだが、僕はその少し前に後藤さんとツイッターのDMでやり取りがあり最後に連絡をいただいたのは7月16日だった。わずか3日前まで連絡をいただいていただけに訃報は本当に信じがたかった。
ツイッターでのやり取りを検索してみると、僕が初めて後藤さんからリプライをもらったのは2010年10月。フランクフルト・ブックフェアでのコスプレ・コンテストに関する僕の認識の誤りを指摘してもらったツイートだった。
次が2015年。アニメ「ふしぎの国のアリス」(日本アニメーション制作)のドイツ語版ドラマCDのツイートへのリプライ。
そして、今年は何度かツイッター上でのやり取りがあり、次にお見かけしたときにはご挨拶させていただきたい、日独の交流について色々教えていただきたいたいと思っていただけに、その機会が失われてしまい残念だ。
また、ドイツのアニメファンイベントの草創期にご尽力されたとも伝え聞く。今日のドイツにおけるアニメ漫画のファン文化の隆盛も後藤さんの協力によるもところが大きいのかもしれない。そう思うと深い尊敬の念しか感じないのであるが、まずはご冥福をお祈りしたい。
ドイツ、デュッセルドルフで6月3日、4日に開催されたアニメファンイベント、Dokomi(ドコミ)の今年の入場者数は4万人と過去最高を今年も更新した。ドイツのアニメ漫画ファンイベントにとってこの4万人という規模はどういったものなのか少し考えてみたい。
ドイツ最大のアニメファンイベントいえば永らく秋にカッセルで開催されるConnichi(コンニチ)だったが、ここ数年は後発のDokomi(ドコミ)が入場者数で追い越した。ドコミはドイツ最大の都市圏である北ライン・ルール地方の豊富な人口を背景に入場者数を伸ばしてきた。コンニチの2016年の入場者数2万6000人(3日間のべ)に対してドコミは今年4万人を達成(2日間のべ)している。単純に日割り計算するとその差は歴然だ。また、近年躍進するライプツィヒのMCC(マンガ・コミック・コンベンション)では、2016年の来場者数が10万5000人(4日間のべ)となるなど、ファンイベントの大型化は進んでいる。ただ、MCCに関しては一般書籍も含めた書籍見本市との併催となっているので単純な比較は難しい。
欧州各国の類似イベントとの比較も難しい。4万人という数字は多いのか少ないのか。ジャパン・エキスポ(パリ)、ハイパー・ジャパン(ロンドン)や南欧の大型イベントなど、いずれもドコミを上回る規模だ。ただし、それぞれコンセプトが異なる。ジャパン・エキスポは日本の自治体のブースを多く招致するなど、ポップカルチャーがメインとは限らないし、ロンドンのハイパー・ジャパンは「食」のエリアが強い。また、いわゆるコミックコンベンションだと日本の漫画だけでなく米国由来のアメコミのファンも含む。一方で、ドコミは米アニメエキスポ(ロサンジェルス)を手本としたアニメ漫画ファンの祭典となる。
米国のアニメエキスポは近年好調なようだが、ドコミも追随できるのか。これについては、前ページの写真を見てもらいたい。ドコミは今年、産業見本市施設メッセ・デュッセルドルフの展示ホール4か所を使って開催された。開催規模は5万平米。およそ東京ドーム1個分となる。写真はワークショップ・エリアなどが配置された13番ホールだが、過去最高の入場者数を記録したイベントの盛り上がりは伝わってこない。会場が広すぎたために来場者が分散化したという意見もあるが、単純に会場のキャパシティを使い切っていないことが原因。もっと言えば、入場者数が予想を下回ったともいえる。開催資料を見ると来場見込みは4-5万人とあるので、4万人という数字は目標をギリギリ達成できたといったところだろうか。原因のひとつとして考えられるのは、開催規模の拡大がうまく伝わっていなかった可能性があること。前年まではメイン会場は展示ホールに隣接する国際会議場(CCD Sued)で、会場全体の収容人数の制限があり、入場チケットの「品薄」状態が毎年続いていた。そういったことから今年は、当日券目当てのファンが来場を敬遠した可能性がある。もちろん、検証すべきは、総合イベントとして細分化されたファンシーンのそれぞれをうまくすくいとれたプログラム編成だったかということ。これについては、いろいろと思うところがあるので、別の機会に改めて書いてみたい。また、別の見方としては、来場者数が限界に達したというもの。これには、来年の結果を待って判断したいところだ。
ドコミはドイツのコミケを謳っており、同人エリアとなるクリエーターブースに注力している。今年はコミケ実行委員会を招待するなど、「本家」とも協力関係を深化させた。ブース数は約500スペース。この規模は、ドイツ国内はおろか欧州全体を見回しても最大級だと思われる。これはドコミにとって非常に大きな強みであり、来年以降、どのようにこの強みを生かした展開ができるのかが、来場者数4万人の記録を更新できるかのカギとなるだろう。
アニメックスとは?
アニメックス、正式名称「Animexx e.V」は、ドイツ語圏最大の日本の文化と芸術ファンのための団体。2000年にミュンヘンで設立され、会員数は約1000人。有志の会員により大小多数のイベントをドイツ各地で開催。年間のハイライトはカッセルで開催されるコンニチで2016年は2万6000人が参加した。また、ドイツコスプレ選手権(Deutsche Cosplaymeisterschaft =DCM)は、2007年の立ち上げ時から共催者として関わっている。このように日本の文化と芸術を支援することを目的に様々なプロジェクトを実施する。団体の目的は、ファン同士の交流で、自身の作品を発表するプラットフォームを運営する。オンライン向けのプラットフォームは「animexx.de」で約10万人のユーザーが登録している。また、オフラインでは、ローカル・ミーティングやコンベンションといった大型イベントの運営または支援を行っている。「animexx.de」は、日本のポップカルチャー向けのSNSだが、同時にドイツ最大のコスプレ・コミュニティでもある。ユーザーはファンアート、ファンフィクション、工作、イベントやコスプレの写真を公開できる。また、フォーラムでは他のユーザーと意見交換ができたり、ブログ機能を使って自身の意見を公開したりすることもできる。さらにロールプレイや、「数独」、「碁」エリアで他のユーザーと交流することができる。
「Animexx e.V.」による開催イベント一覧
同人漫画アンソロジー「Manga-Mixx」
「animexx.de」のユーザーによる同人漫画作品を集めたアンソロジー本。同人漫画コンテストの応募作品のうち優秀作品を掲載。第1巻目は2005年のコンニチの開催に合わせて発刊された。最新刊の10巻は312ページ、計14人の作品を収録。2009年にはグリム童話をテーマにした作品集「メールヒェン・ミーツ・マンガ」が作られた。また、成人向けの作品を集めた「Hentai-Mixx」も過去2回発行されている。
毎度、フランクフルトから寄稿しておりますKatahoです。今回の冬コミもドイツにて留守番役を務めています。2016年も終わる年の瀬となりましたが、今回は今年1年間に取材・執筆した記事についての思い出をあれやこれやと綴ってみたいと思います。「今年1年間」と読んで「あれ?夏コミは?」とお感じになられた読者諸兄もいることでしょう。夏コミはケイプレスさんが直前に発生したミュンヘンの無差別殺人事件を取り上げたので、オタク関係の話題は1回お休みだったのです。なので、今回は夏コミ向けに書きたかった今年前半の内容と後半を併せた寄稿となります。取材を行った時系列に沿って取り上げます。各記事を読んだ後に本稿を読むことを前提としていますが、逆に元記事に読み進めてもらってもいいかもしれません。いずれにせよ、コミケ帰りの電車の中や正月にコタツの中で読んでもらえるのかなと日本へ思いを馳せつつ書き進めて参ります。最後までお付き合いいただければ幸いです。
1件目の記事はこちら。
ガチのお城でコスプレ舞踏会!?in ドイツ
Cosplayball im Schloss潜入レポート!!
ドイツのお城で開催されたコスプレ舞踏会に潜入!!
城や庭園での写真撮影や、広間で舞踏会を楽しむ様子を密着取材。
そして、ドイツのコスプレイヤーにとって
コスプレ舞踏会とは何なのか一考してみました。
コスプレ文化雑誌「コスプレチャンネル no.3」(クロノス日本版2016年6月号増刊、出版社:シムサム・メディア)に掲載していただいたイベントリポートです。今年はひさしぶりに紙媒体のお仕事がもらえました。イベント自体は単日開催のものでしたが、舞踏会が夜に開催されるため1泊2日の旅程で取材してきました。当初は1-2ページで取り上げてもらうと企画したものでしたが、その後「どうせなら・・・」と6ページに拡大しました。カメラ担当を連れての取材だったのですが、事前の取材許可がなかなか面倒でした。というのも、会場となった城は州の文化財保護機関の管轄で、事前申請はもちろんのこと当局と綿密な打合せも必要で、僕としてもよい経験をさせてもらいました。
本物の舞踏会場でコスプレをする、というコンセプトはその後、今冬に数カ所で開催されたことなどから察するに、ドイツにおけるコスプレ文化の広がりという点で注目すべき現象になっています。今回、取材したこのイベントも11月に再び開催しており好評だったようです。残念なことに雑誌「コスプレチャンネル」はその後、休刊してしまいました。もし古本屋などで見かけることがあったら、写真もたくさん掲載してもらっていますので、ぜひ読んでみてください。
では2件目に移ります。ここからはオンラインメディア「ねとらぼ」で掲載してもらった記事です。今も全記事オンラインで読めますのでぜひ読んでみて下さい。
「フェイクって悲しいよね」 ドイツのアニメファンイベント、海賊版対策に動く 「最もひどい海賊版コンテスト」実施
アニメグッズなどの海賊版が流通するドイツの現状を変えたいと立ち上がったドイツ人にインタビューしてきました。
(2016年4月15日)
これは2014年に取り上げた記事中のドイツのイベントにおける海賊版対策の部分が読者の反応がよかったので、深掘りしてみようという企画でした。海賊版対策に取り組む熱心なファンたちが団体を立ち上げ、オランダやデンマークなどのイベントとも協力しながら対策をしていこうというとてもアツい試みでした。記事中で取り上げた海賊版コンテストはその後、逃してしまいましたが、ドイツにおける海賊版対策はファンによるボトムアップ型のアプローチでも進展しており、今後が楽しみな分野でもあります。
これが“ドイツのコミケ”だ 特大ファンイベント「ドコミ」に行ってきました!
欧州各国からも広く参加者を集めるドイツのファンイベント、ドコミの模様をお届けします。
(2016年5月8日)
今年最も読まれた記事です。この「ドコミ」はその後、のべ来場者数でドイツ最大のイベントになりました。「コンニチ」が歴史的建築物を会場とするのに対して、「ドコミ」は一般的な見本市会場です。ドイツらしい雰囲気という観点では少し物足りない部分もありますが、規模はまだまだ拡大しそうです。例年は企画のお手伝いをしていることもあり、今回はじめて会場を隈無く歩き回りました。特に、会場向かいの公園を見に行けたのは収穫でした。市営の大きな公園で、「ドコミ」の公式会場に含まれているという大義名分を片手にコスプレイヤーのみなさんがこぞって撮影会を行ったり、ピクニックを楽しんでいたりしました。こういう場所の利用を市と事前に話しておく姿勢には感心したものです。
海外でも広がるボカロ ドイツのボカロ事情を探る
ポップカルチャーとして受け入られるAHS、ハイカルチャー分野で注目される初音ミク。ドイツのボカロ事情を紹介します。
(2016年7月1日)
今年は年頭からボカロ関係の話題がドイツの新聞を賑わせることが続いており、これは一度まとめて置かなければと書いた記事ですね。前半はベルリンで実施されたボーカロイドのコンサートです。ボカロの開発販売を手がけるIT企業AHSの公式コンサートとして開催されたイベントだったのですが、正直、驚きました。3D映像の投影にはいわゆるディラッドボードが投入され映像の品質も十分に確保しつつ、演出にもこだったコンサートでした。機会があればぜひまた見てみたいものです。ベルリンではこのほかにも、ボカロ関係のイベントが開催されたりするなど、あの町にはボカロを受け入れる何かがあるようなそんな気がします。
欧州最大のゲーム見本市「ゲームズコム」にコスプレイヤーが集まる理由とは?
ドイツのゲーム見本市「ゲームズコム」には多数のゲームファンにくわえてコスプレイヤーも訪れます。
(2016年8月27日)
アニメコンベンションに行くと「わんさか」いるコスプレイヤーですが、その「出没先」はアニメコンベンションにとどまらないという事例のひとつですね。ゲームの見本市なので当然ながらゲーム関係のコスプレが多いのは記事でも触れましたが、残念に思ったのは、日本のコンテンツが少ないことです。日本のゲームのコスプレかなと思っても海外の作品だったりすることも多かったです。コスプレと言えば日本発の文化でその「ネタ」も日本のアニメやマンガ、ゲームかなというのは先入観だと気付かされました。
有料スケブやイラストカードが普及 ドイツの絵師事情をベルリンのアニメファンイベントで探ってきた
カカオ・カルテ? 有料スケブ? 日本とはちょっと違うドイツのイラストレーターの活動とは?
(2016年12月3日)
今年最後の記事ですね。今までたくさんのイベントで取材してきましたが、意外と絵師さんの事情について取り上げたことはなかったなと書いてみました。ちょうど、今年の夏コミだったかなに有料のスケブが許されるのかどうかについてツイッターを中心に議論が起こっていたのを見かけたので、その問題について考える材料になればと思いました。記事では触れませんでしたが、スケブに描く内容が二次創作なのかオリジナルなのかという論点はあるわけで、オリジナルであれば日本でも大いに有料でやってもいいのではと感じました。二次創作であればオリジナル作品、作家への配慮をどうするのかがポイントになりそうですね。
さて、だらだらと書き連ねて今回はここまでです。ではまたの機会まで!Auf Wiedersehen!
ドイツ在住もいつの間にか10年。アニメ、漫画、ゲーム、ボカロ分野で、日独交流をお手伝いしていますKatahoです。今回は、今秋に参加したベルリンのアニメコンベンションMMCのもようを中心に、「ベルリン」と「ボーカロイド」の関連性について考えてみたいと思います。
今回のMMCでは意外とボカロのコスプレが目につきました。なぜ意外かというと、2015年もデュッセルドルフのDokomi、ボンのAnimagiC、カッセルのConnichi、ウィーン(オーストリア)のAniNiteなど大型アニメファンイベントに参加してきましたが、コスプレイヤーの方は流行のネタを追い続ける場合も多く、2015年のコスプレ・ネタに関していうと、ボカロは以前と比べて控えめになったのではという印象だったからです。
そんなMMCでは、今年は日本からの招待ゲスト、ふわりPのライブ企画のお手伝いとボカロファンプロジェクト「みらいのねいろ」としてファンパネルを実施しました。
ふわりPのライブ・コンサート
ふわりPのライブ・コンサートでは、コンセプトの作成からセットリスト、演者の手配までを行いました。
コンセプトはいわゆる「創作の連鎖」という文化現象を知ってもらい、より多くの人とボカロをネタに盛り上がりたいというもの。実はこれ、毎回同じなのです。ボカロの醍醐味って「みんなで楽しく」イベントができるというところだと思っています。
(MMCのプログラム冊子。ふわりPのライブとパネルの紹介ページ)
今回のライブは、ボカロの歌声に合わせてふわりPがキーボードを生演奏するというものでした。そこに「みんなで楽しく」要素として、ドイツのボカロファンに参加してもらおうと考えたわけです。そこで、「踊ってみた」ダンサーのラウラさんとアリソンさん(前回のC88号の記事で紹介したドイツの踊り手です。)にベルリンに来てもらいました。
きっかけはこうです。ある日、ふわりPの楽曲のダンスを彼女たちがカバーしているのを見かけて、これは!と思いステージ上でのコラボを思いつきました。彼女たちも、ぜひとも!と実現に至ったわけです。このステージ・パフォーマンスのもようは一部、ラウラさんが公開したイベント・レポート動画に登場しますので、よかったら見てみてください。
(Youtubeの動画からスクリーンショット)
また、楽曲「きらり」に関しては、歌詞のドイツ語訳をしてみました。日本への留学経験もあるカロリーンさんの翻訳となります。ボカロダンス・カバーを動画サイトに投稿する踊り手さんなのですが、ボカロ全体についても詳しく、さらに日本語も堪能ということで歌詞の翻訳を引き受けてくれました。
もしかしたら、読者の中にドイツ語が分かる方がいるかなと淡い期待をしつつ、翻訳してもらった「きらり」の冒頭部を少しだけご紹介。
ふわりP:「きらり」
いつのころから ゆめのなかの
ぼくのすがたは とおくとおく
きづかないうちに
↓↓↓
Seit langer Zeit in meinen Träumen
scheint meine Gestalt weit weit entfernt
ohne, dass ich es bemerkt habe
実はこれ、結構、良い訳なのですよ。機会があればどこかで全篇紹介したいところです。カロリーンさんありがとう。
そして、今回のハイライトのひとつはMMC向けのオリジナル楽曲の作成でした。ふわりPは2013年にもベルリンのMMCに招待されたわけですが、その時に「よんでくれてありがとう」という曲を作成しました。招待への感謝の気持ちを表現したというワンコーラスのみの曲だったのですが、今回はツーコーラスにリフレインを加えた完全版として披露することができました。
さらに歌詞もドイツ語にしてみました。この曲の訳は、自分でやってみました。ドイツ語でも歌えるように語順や長さなど工夫しています。
この曲と歌詞についてはYoutubeのMMCのチャンネル内で公開されていますので、よかったらご覧になってください。
ライブは冒頭10分くらいふわりPにトークをしてもらい、演奏を含めて全体で60分程度のステージショーとなりました。
夜の遅い時間帯のパフォーマンスでしたが、会場には若いボーカロイドファンが大勢集まり満席になるほどの盛況ぶりでした。
(本来は裏方なのですが、今回ははステージで司会と通訳も、、、)
ボーカロイドファンパネル「みらいのねいろ」
御存知の通り、ファンプロジェクト「みらいのねいろ」は正木良明さんが主宰する団体D.P.H.のボカロ紹介プロジェクトです。今回は正木さんは来られませんでしたので、僕が思う存分、ボカロ文化について語ってくることとなりました。
楽曲の制作者や動画の作成者など、ボカロの楽しみ方には幅が広く様々な創作ジャンルに及んでいます。自分の楽しみ方とは違う、新たなジャンルを見つけてもらおうというのが今回の狙いでした。
前半は、「創作の連鎖」という考え方や様々な創作ジャンルが関連していることを整理して紹介。
後半は、招待ゲストのふわりPと踊り手のラウラさん、アリソンさんにも参加していただき、それぞれの立場から、作曲、カバーダンスのジャンルについて具体的に紹介してもらいました。
(プレゼンのタイトルページ。タイトル絵:ゆうき刻菟さん)
(パネル内で「踊ってみた」を紹介するラウラさんとアリソンさん)
この他、MMCでは、ふわりPのオリジナル限定CDが発売されたり、サイン会が大好評だったりと、とても楽しいイベントになりました。
そして、ベルリン、、、
ここからは今回のイベントを少し離れ、ベルリンとボカロについて考えてみたいと思います。改めて、ベルリンで過去にあったボカロ関係の出来事を整理してみると、ドイツの他の都市と比較して意外と浸透しているのかもと思ったからです。しかも、多方面に。
(2013年のMMC向けに作成された「みらいのねいろ」のオープニング動画。ダヨーさんがベルリンのテレビ塔に登ります。みんなみてね。)
今回のMMCはアニメ・マンガファンが集まるコンベンションです。このMMCには前回2013年にもボカロイベントを実施させてもらいました。
ステージでMMD上映会をやったり、パネルでは様々なドイツ人クリエイターに参加してもらい、MMDユーザーにはMMDを、ボカロPにはボカロの使い方を紹介してもらったりしました。
2013年の夏には、初音ミクのライブ・コンサート「マジカルミライ」の公式ライブビューイングがベルリンで行われました。
(ベルリンのライブビューイングを紹介するファンメディア)
そして、10月にくだんのMMCが開催され、その後、11月にはデジタル・メディアの著作権に関するシンポジウムが開かれ初音ミクもテーマのひとつとして取り上げられました。
このシンポジウムにはメディア学者の武邑光裕さん登壇し、講演の概要は主催者のページで読むことができます。
(主催者ベルリナーガゼットのページ)
また、来年の2月にはベルリンで開催されるメディア芸術祭で、初音ミクを使用したライブパフォーマンスが計画されています。
(メディア芸術祭「CTMフェスティバル」の告知ページより)
このように見てくると、1)アニメコンベンションというファン同士の交流の場、2)ライブビューイングとはいえ公式のライブイベント、3)アカデミックな議論の場、4)ボカロを使ったメディア・アート系イベント、といった具合にイベントのジャンルが多岐にわたっていることがわかります。
これをドイツの他の町と比較した場合、ここまで様々なボカロ関連のイベントが開催された例はありません。
そう考えると、ベルリンのボカロ事情は、社会の様々な層/グループのひとたちのもとに届いており、意外と認知され「市民権」を得ているのかもしれません。
もしかしたら、ベルリンで初音ミクの公式ライブ・コンサートが行われる日も近いかもしれませんね。今回の原稿を考えていてそう思いました。2016年はどうなることでしょう。今から、楽しみです。
ドイツ在住もいつの間にか10年。アニメ、漫画、ゲーム、ボカロ分野で、日独交流をお手伝いしていますKatahoです。今回は、最近気になるあるこれについてご紹介したいと思います。
ドイツの「とうらぶ」事情
日本では女性ユーザーを中心にオンラインゲームの「刀剣乱舞」(略して「とうらぶ」)が人気ですね。ドイツはどうなのでしょう。先日訪れたイベントで「とうらぶ」のコスプレグループに遭遇したので、そのあたりの事情を聞いてみました。
まず、どのようにしてゲームを知ることになったのかという点。一番、多かったのは画像共有SNSのタンブラーを通してというもの。キャラクターが魅力的で、一目惚れしてしまうというパターンでした。このほかには、このコスプレグループのリーダー、アンシーさんの紹介でというひともちらほら。
(ドイツ、ボンのアニメコンベンションAnimagiCにて。筆者撮影)
グループの半数くらいの人は、実際にゲームをプレイしているとのこと。でも、ゲームは日本語オンリー。言葉の壁はどう乗り越えているのだろうと聞いてみると、英語版のWikiページがあり、逐次参照していると教えてくれた。こうやって、皆さん日本語を覚えていくのでしょうか。たくましいですね。
「とうらぶ」はキャラクターデザインの魅力だけではなく、簡単な操作性も「はまる」要因だそうです。
お気に入りのキャラは?と聞いてみたところ、「加州清光」「大和守安定」といった声もありましたが全体としては分散しているようでした。
アンシーさんは、今年の冬コミの時期に来日を予定しているそうで、日本でコスプレ写真のロケ撮影をやってみたいとのこと。
ゲームの世界観に合う場所は日本しか考えられないとのことで、そういった場所でロケ撮影ができる日本のコスプレイヤーをとても羨ましく思っているようです。
アンシーさんによると、以前「進撃の巨人」のコスプレ撮影をしたときは、日本のファンがドイツの森や町並みを羨ましく思っていたけど、今度は自分が羨む番になってしまったという。なるほどと思いました。
「とうらぶ」のキャラ「加州清光」に扮する グループのリーダー、アンシーさん。 HP:http://anshie.de/
次のお題です。
ドイツの「踊ってみた」事情
ニコニコ動画に投稿された曲に合わせて「踊ってみた」というダンス動画は、ボカロ以前、ニコニコ動画のわりと初期からあったように思います。
その後、ボカロ曲に合わせて「踊ってみた」ユーザーが増え、それをカバーする「踊り手」が現れ、、、日本では、何年も前から続く当たり前の光景なのではないでしょうか。
実は欧州、とくにドイツでは、この「踊ってみた」は、今が旬とでもいうほどの盛り上がりを見せてきています。
盛り上がるきっかけは何だったのだろうと考えた時、思い出したのは、2014年にドイツ最大級のアニメコンベンション「Dokomi(ドコミ)」(開催地:デュッセルドルフ)で、「踊り手」を対象にしたダンスオフ・コンテストを実施されたことです。
その際、僕も、ボカロ界に「詳しい」日本人としてコンテストの審査員をお願いされたのですが、10組くらいだったでしょうか、参加者は今までネットで見かけたことがない人ばかりで、しかも皆さん上手。とても驚いたものです。
その「踊ってみた」コンテストは、今年の「ドコミ」でも実施され、主催者によると、最も盛り上がったステージ企画のひとつだったそうです。
(ドイツの「踊り手」たち。アンナさん(右から3人目)から提供いただきました。)
さて、前置きが長くなりました。
実は今回、ドイツで最も活発に活動する踊り手ユニット、「Sugar☆Beat(シュガー・ビート)」のお二人に、ドイツの「踊ってみた」事情について、お話を聞くことが出来たので、その模様をお伝えしたいと思います。
まず、ドイツの「踊ってみた」人口はどれくらいなのでしょう。アンナさんによると20-30人くらいだそうです。
これは、実際にユーチューブなどで動画を公開している人たちで、彼女たちを「踊ってみた」界隈の中心だとすると、その周りに、踊ってはいるがその模様を録画して公開していないひとたちがいて、さらにその外側に、「踊ってみた」動画をただ見るのが好きという人たちがいるのではということでした。
そうなると、ドイツでは結構な数の人が「踊ってみた」界隈にカテゴライズできそうですね。
性別による傾向はあるのでしょうか。
これについては、女性が中心、むしろほぼ女性だそうです。
では、彼女たちはドイツのどのあたりに多く存在するのでしょうか。
ドイツは人口が分散化していて、大都市に集中するのではなく、中規模都市が点在するわけですが、「踊り手」たちも、そのように、ドイツの各地方、町に分散しているようです。
ちなみに、くだんのアンナさんはボン、ラウラさんはハイデルベルクに住んでいます。
踊り手ユニット「シュガー☆ビート」のアンナさん(左)とラウラさん(右)http://www.nicovideo.jp/user/41055330/mylist
そんな「踊り手」たちですが、カバーしたいダンスについての情報はどうやって集めているのでしょうか。
実は、みなさん、好みのボカロPや踊り手といったクリエーターの各種アカウントをフォローしていて、随時、日本のクリエーターたちの近況をチェックしているそうです。
「シュガー☆ビート」のお二人が最もリスペクトする「踊り手」は、「まなこ」さんと「やっこ」さんだそうです。
日本国外の「踊ってみた」動画は基本的に日本の有名「踊り手」たちのカバーですが、実際に、新たなコレオグラフィーを考えたりはしないのでしょうか。
答えは「ノー」。そこは、まだハードルが高いとのことでした。
ただし、単純にダンスをカバーするだけでは、面白くない。なにかオリジナリティを出したい、そんな思いからいくつかのこだわりがあるそうです。
例えば、撮影場所。元動画は室内で撮影されたものなら、屋外で撮影して、動画にオリジナリティを追加するそうです。
また、服装に関してもこだわりがあるそうで、元動画の「踊り手」の服装に合わせたり、もしくは、グループで踊る場合は、自分たちで服を選んで統一したりすることもあるらしいです。
同じくアンナさんより提供
今後の展開としては、もっと仲間を増やしたいそうで、そのためにワークショップなどをイベントで開催していきたいそうです。
もっと盛り上がって規模が大きくなれば、日本から彼女たちがリスペクトする日本人の「踊り手」さんを呼んで交流できるかもしれませんね。
そして、最後のお題です。
ドイツのコスプレ書籍について
ドイツではコスプレに関する大型出版プロジェクトが、今年前半に2件もありました。
以前から、研究論文やそれをまとめた研究書の出版はちらほらありましたが、今回の2冊はより一般的な読者を対象としたとものです。
テーマはコスプレですが、内容はまったく異なっています。しかも、それがうまくお互いを相補するように見ることもでき、ドイツのコスプレ界隈や日本国外、欧州のコスプレ事情を垣間見ることができる面白い企画です。
それでは、それぞれ見ていきましょう。
1冊目は、「How to Make MyCostumes」
コスプレ衣装の製作方法について詳細に解説した1冊。生地の種類、特性による選び方から、型紙の取り方、ミシンの使い方など豊富な写真資料をもとに説明されたハウツー本です。
衣装の製作だけにとどまらず、小物の製作方法から、コスプレ用の化粧アドバイスと幅広くカバー。写真撮影に関しては、ポーズなどの撮られ方に関してだけではなく、カメラマンの手配マナーなども紹介。コスプレイヤーに関するありとあらゆる知識、アドバイスがちりばめられた1冊です。
出版元は、コスプレ用のウィッグ販売などを行なう企業MyCostumes(マイ・コスチューム)。フランクフルトに店舗がある他、通信販売やイベントでウィッグを中心とするコスプレ用品を販売しています。
海外のコスプレイヤーがどのように、服を作ったり、化粧をしたりするのかに興味のある方にとっては、面白い参考資料になると思います。今回発売したのはドイツ語ですが、英語版も準備中だとか。今後の展開が気になる1冊です。
写真左「How to Make MyCostumes」、右「Was ist Cosplay」
2冊目は、「Was ist Cosplay」。
タイトルは、「コスプレとは何か」という意味です。
コスプレはアニメや漫画、ゲームが好きな若者たちのあいだで、文化といってもいいほどポピュラーな趣味になりましたが、一方で、コスプレイヤーを子に持つ親や、学校の先生たちには、まだまだ理解しがたい面もあるようです。
そういった人たちに向けて書かれたのがこの本で、著者のフリトヨフ・エッカルトさんは、ドイツのコスプレ界隈ではちょっとした有名人で、10年以上にわたり、アニメコンベンションでのコスプレ・コンテストの運営に携わってきた方です。
そんな彼の10年来の知識、経験がつまったのがこの1冊で、文化現象としてのコスプレの解説から、コスプレ・コミュニティとはどういったものなのか、イベントやコンテストはどのように運営されているのかなど、自身の経験を元に詳細に解説した本です。
見どころのひとつは、有名なコスプレイヤーへのインタビュー。
ドイツの有名コスプレイヤーにとどまらず、日本のコスプレイヤーや、欧州、アジアで人気のひとたちまで、幅広くカバーしています。著者自身が、東南アジアなどのイベントにも直接参加し、集めたインタビューは読み応え抜群。
コスプレに関する解説は、これまで外部に存在する研究者や、いちコスプレイヤーによる記述が多かったような印象ですが、この本は、いわばインサイダー情報を扱う1冊。幅広いテーマをカバーしつつも、当事者ならではのより深く信頼できる情報が満載で、日本国外のコスプレ界隈を知る上でも、第一級の資料としての価値がありそうです。
著者のエッカルトさんは、現在、大学などでコスプレ文化についての講演を頼まれるほど、注目されている人物。今後の、活動も気になるところです。
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以上、「Katahoの気になるあれこれ」をお届けしました。いかがだったでしょう?
日本のアニメ、漫画、ゲーム文化に加えて、最近は、ボーカロイドやニコニコ動画など、流行の発信元は、基本的に日本ですが、そのジャンルは多様化してきています。そして、そのそれぞれがドイツにも着実に浸透してきている、そんな印象をここ数年ずっと持っています。
仕事や休暇など、ドイツに来られる際はぜひ、彼ら彼女たちと交流してみてください。自分たちが得意な日本の文化で、国際交流ができるなんて、素敵なことだと思いませんか?
みなさん、グーテン・タークです!Katahoです。相変わらずドイツのボカロ事情が面白くてずっと首を突っ込んだままの状態です。今回はドイツ人ボカロPのニコラスPにインタビューしてみました。今回もボカロネタとなりましたが、最後までお付き合いいただければと思います。
今回のインタビューのきっかけとなったのは、今年6月に静岡のつま恋で開催された「第00回世界ボーカロイド大会」(以下略称のボカコンを使用)です。ボカロファン有志がファンとともにファンのために開催した宿泊型イベントというものでした。詳細は各所にレポートが上がっているので読んでいただきたいのですが、僕もドイツチームの一員として、ライブ中継による日独交流企画やボカロ学会でドイツのボカロ事情を紹介しました。
ボカロPのニコラスPやケンタイP、またはボカロ絵師のランチャさんの作品を紹介することができ、日本のボカロファンの皆様からダイレクトに反応を得るというとても興味深い体験ができました。
ただ、そこで気になったのは、ドイツのボカロ系クリエーターの皆さんはドイツの今の現状や今後の展望についてどんな印象を持っているんだろうということ。
というわけで、今回はボカコンの日独交流企画で結月ゆかりを使った楽曲「処女友情↑↑(上上)」を発表したニコラスPにインタビューしてみました。用意した質問は2つ。ドイツのボカロ事情について今の状況と今後の展開について聞いてみました。
聞き手(Kataho以下K)今日は忙しいなか、時間をとってくれてありがとう。ドイツのボカロって今どんな状態だと思う?
ニコラスP(以下N)ボカロ人気は今のところ、そのほとんどがアニメやマンガのファンたちの間だけです。それ以外だと曲を聞いたことがある人を見つけるのはかなり難しいですね。アニメ・マンガのファンたちのなかでもボカロ曲を好まないひともいます。メロディと歌詞をパソコンに入力すれば曲が出来上がると思っている人もたくさんいるようです。アニメ・マンガファン以外の人に説明しても、ほとんど興味を持ってもらえません。反応は冷ややかで、「ああ、また日本のやつね」と返ってくるだけです。関心を持つ場合でも、表面的なものにとどまります。
K: たしか、大学の専攻は音響技術だよね?大学でも関心ある人は少ない?試してみた結果、興味がわかなかったとか?
N: 大学にはクリエイティブな人がたくさんいますよ。音楽を作ってるひともいます。でも、ボカロへの関心は低いです。一番大きな原因は音楽のジャンルですね。つまり、彼らの曲は人の歌声がもっとも重要視されるジャンルなんですよ。ヒップホップとかラップとか。でも、関心を持っている人に出会ったことはありますよ。彼らの中には、ボカロでオリジナル曲を作ってみたいと思っているようです。ただし今は、より性能が高くて非日本語のボカロの登場を待っているような感じです。用途も限定的で、曲全体をリードするようなボーカルとしてではなく、短いフレーズで使うくらいです。
K: ちなみに最後のところは、君の意見それとも大学の友達の話し?
N: 大学の友達の話です。
K: なるほど。それでは次のテーマに移るね。ドイツでのボーカロイドは今後、どうなると思う?こういう現象は起こるかもしれないけど、逆にこういうのは起こらないとか。あと、今後の発展に欠けてるものとかって何かあるかな?
N: 簡単には答えられないですが、関心が低い理由はほとんどの歌声が日本語になるところですね。例えば、僕が今回、結月ゆかりにロシア語で歌わせたように、外国語を可能にする方法はあるんですよ。ただ、それを実行するには日本語の発音表記を知る必要があります。加えて、日本ではうまくいった初音ミクとアニメ風キャラクターの組み合わせがドイツだとアニメファン以外では受け入れられてないというのもあります。それを除いたとしても、ボーカロイドの声は一般的なドイツ人の耳にはおそらく「不気味の谷現象(Uncanny Valley)」的なものに聞こえてると思います。つまり、歌声を聞くと、血の通った本物のスターではないものが舞台の上に立っているのを想像してしまうと思うんですよ。これが、大きなマイナス要因だと思います。
K: では仮に、キャラクターを失くして母国語で歌えるとしよう。どんな音楽ジャンルの人たちがボカロ曲を作ると思う?
N: 電子音楽や実験音楽のジャンルくらいですかね。メジャーになるようなポップ音楽で使われたりといったことは想像できないです。
K: 将来、ドイツ的なボカロ曲がドイツから出てくると思う?「これはドイツっぽい!」と思えるような曲。
N: 良い質問ですね。音楽は言語の限界を超えるものだと思うんです。よく考えるのは、どこから「これは日本の曲」とか「これはドイツ的」だと言えるのか、そして、その要素は何なのかということです。ボカロ曲に関しては「これはドイツ的」といったものはすぐには出てこないと思います。ただし、一度じっくり取り組んでみるのも悪くないかもしれません。ちゃんと理解できるドイツ語のボカロ曲が出てくれば、それが最初の一歩になることでしょう。
K: なるほど。ドイツ人がドイツ語でボカロ曲を作るにはまだ時間がかかりそうですね。では、日本旅行楽しんできてください!(このインタビューは彼の来日直前に行いました。)
以上、今回は時間の都合でここまでとなりました。ニコラスPには、ぜひドイツ人ボカロPの先駆者のひとりとして、今後とも様々なジャンルのボカロ曲に挑戦してもらいたいものです。
さて、そんなニコラスPですが、今回の夏コミでは、自身の初ソロミニアルバムとなる「銀河の中へ」が頒布予定となっています。表題曲の「銀河の中へ」に加え「い・じ・わ・る」、「処女友情↑↑」の3曲とうち2曲のカラオケ版を収録しています。機会があればぜひ聞いてみてください。
ミニアルバム「銀河の中へ」(ニコラスP)
イラスト:melone (http://www.pixiv.net/member.php?id=2282106)
最後に、プロフィールをお願いしたところ長文が送られてきました。誤解されたくないので、全文紹介してほしいとの本人の希望により、以下全訳します。
ニコラスPことニコラス・シュミットです。半年前から電子音楽の作曲を始めました。制作スタイルはいわゆる日本のDTMです。電子音楽は子供の時から好きでしたが、楽曲の制作自体を始めたのは最近できっかけはボーカロイドとの出会いでした。音楽教育は受けていません。作曲は試行錯誤しながら少しづつ経験を積んでいくつもりです。とりあえず電子音楽(ダンス音楽も含む)から始めてみました。日本の音楽はプロ・アマ問わずディテールの作り込みを重視していると思います。そういうスタイルを自分の楽曲制作に取り入れていこうと考えています。ジャンルにはこだわりません。電子音楽というジャンルは作曲経験もほとんどなかったので、やってみようと思いました。また、私はギタリストでもあり、ロバート・フリップのギター教室「ギター・クラフト」に在籍しています。あとは、サウンドスケープやライブルーピングといった実験的な手法にも興味があり、次のボカロ曲で試してみたいと思っています。現在は、ケルンのSAE学院でオーディオ・エンジニアリング&プロデューシングを専攻しています。専門分野は録音機材、ミキサー、マイクといった音響機器です。作曲や編曲はあまりやっていません。日本語は学校などで勉強したわけではないので、深い内容の話題にはついていけませんが、ツイッターはやっているのでよかったら声を掛けてください。(Twitter: @ncras04)
以上、ニコラスPのインタビューをお届けしました。需要があれば、次は、他のドイツ人ボカロ・クリエーターの方にもインタビューしてみたいと思います。よかったら、フィードバックください。では、また。